東映アニメ、バンダイナムコ、ソニー・ピクチャーズが株式一部売却で上場維持

ファイナンス決算

 東映アニメーションは発行済株式の約9.2%に相当する389万3300株を2024年3月に売り出す。放出するのは、バンダイナムコホールディングスが保有する311万3300株とソニー・ピクチャーズ エンタテインメントが保有する78万株。
 2024 年2月27日から2024年3月4日までに売り出し価格を決定、国内はSMBC日興証券、海外はSMBC Nikko Capital Marketsが引受人となる。2024年2月15日の終値を基準にすれば、総額で660億円規模になる。
 売り出しで流通株式は一挙に1.5倍以上に増える見込みだ。株式市場を通じた売却でなく、売り出しを選択したのは、流通株式が短期間に急激に増えることによる株価への影響を考慮したと見られる。

 売り出しは、2022年4月に東京証券取引所が打ち出した上場株式の流動性確保のための新基準導入がきっかけになっている。東京証券取引所は市場区分を再編したうえで、上場維持のための基準を従来より厳しくした。
 東映アニメーションが選択したスタンダード市場では、取引の活性化を目的に上場各社に400人以上の株主、流通株式時価総額10億円以上などの基準達成を求めた。東映アニメーションはこれらの指標は大きく上回るが、発行済株式の流通比率25%以上の基準を大きく下回り、2023年3月末時点でも17.4%だった。これは同社には持株比率の大きい安定株主が多いためである。
 そこで今回、株式保有比率第3位のバンダイナムコホールディングスと第9位のソニー・ピクチャーズ エンタテインメントが株式を手放すことで、流動性を一挙に高める。

 株式売り出しでバンダイナムコホールディングスの持株比率は11%から3.45%に低下し、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントは全ての持株を手放すので大株主から姿を消す。
 いずれも東映アニメーションへの影響力は小さくなるが、バンダイナムコは500億円以上、ソニー・ピクチャーズは約170億円の資金調達ができ投資のための資金余力も増す。近年の東映アニメーションの株価上昇の恩恵を受けるかたちだ。

 一方で、影響力を増しそうなのが株式保有比率1位の東映と第2位のテレビ朝日だ。東映は東映アニメーションの親会社でグループを合わせると発行済株式の約4割を保有、テレビ朝日は株式保有比率19.6%で東映アニメーションを持分適用会社としている。
 両社は今回の売り出しでは、株式の放出はしない。持株比率を減らすことで、子会社や持分適用会社から東映アニメーションが離れることを避けたかったと見られる。決算を連結することで、高収益の東映アニメーションは両社の経営業績に大きな影響を与えているからだ。
 両社の持株比率は、合せて6割近くにも達する。バンダイナムコホールディングスが持株比率を落とし、ソニー・ピクチャーズが大株主から消えることで、東映とテレビ朝日の株主としての存在感は今後さらに大きくなりそうだ。

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