辻村深月の小説を原作に原恵一が監督した長編アニメ映画『かがみの孤城』が、ドイツの映画祭で大きな賞に輝いた。2024年4月23日から28日まで開催された第31回シュトゥットガルト国際アニメーシュン映画祭(The 31st Stuttgart International Festival of Animated Film)は、長編部門のコンペティションにあたるANIMOVIEで『かがみの孤城』を特別賞に決定した。
長編部門では『かがみの孤城』を含めて、グランプリを受賞した『シロッコと風の王国』(フランス/ベルギー)、『Puffin Rock and the New Friends』(アイルランド)、『White plastic sky』(ハンガリー/スロバキア)、『PANDA BEAR IN AFRICA』(オランダ)、『ケンスケの王国』(イギリス)の6作品が上映された。特別賞は準グランプリの位置づけになる。
シュトゥットガルトの長編部門では、これまでにも日本からの受賞が少なくない。2010年に宮崎駿監督の『崖の上のポニョ』、2014年に新海誠監督の『言の葉の庭』、2019年に細田守監督の『ミライの未来』がグランプリを受賞している。また特別賞は2017年に片渕須直監督の『この世界の片隅に』が受賞して以来、日本勢としては2度目だ。
シュトゥットガルトはドイツ最大のアニメーション映画祭で、ザグレブなどと共にヨーロッパではアヌシーに続く存在感がある。新しい試みにも積極的で、今年はインタラクティブメディアを得意とするフィルム&メディア エックッスチェンジ(FMX)と同時開催として、アニメーションの表現の拡張を目指した。
2024年は世界からエントリーのあったなかから、短編と長編を合せて138作品が期間中に上映された。短編ではフランスとハンガリーの合作でFlóra Anna Buda監督の『27』がグランプリ、ウクライナのSofiia Melnyk監督の『Mariupol. A Hundred Nights (マリウポリ 100日間の夜)』が特別賞を受賞した。審査員は『MARIUPOL』の贈賞にあたり、「目に見える、そして目に見えない戦争の残虐性へ抗議するため」と言及した。このほか学生部門、ゲーム部門、ドイツ作品部門、スポンサーによる各賞が発表されている。
『かがみの孤城』は、学校のなかのイジメで居場所を失くした不登校の中学生・こころが主人公。鏡の中にある城に引き込まれたこころは、他の6人の子供たちと共にどんな願いも叶えることの出来る「願いの鍵」を探すことになる。
作品は2023年のアヌシー国際アニメーション映画祭オフィシャルコンペティションやロッテルダム国際映画祭の公式上映に選ばれるなど高い評価を受けた。
シュトゥットガルトでは審査員は本作を「普通なら起こりえないような友情を通して、孤立を克服することの大切さを表現した繊細な物語」と評した。
シュトゥットガルト国際アニメーション映画祭
(Stuttgart International Festival of Animated Film)
https://www.itfs.de/en/