アヌシー映画祭が今年の長編プログラム発表、コンペ部門は日本から5作品

アヌシー国際アニメーション映画祭

 アニメーション分野で世界最大規模として知られるフランスのアヌシー国際アニメーション映画祭が、今年の長編映画のプログラムを発表した。映画祭は、6月9日から15日まで7日間開催する。
 期間中、もっとも注目される長編オフィシャルコンペティションには、日本から共同製作も含めて4作品が選出されている。『化け猫あんずちゃん』(久野遥子監督、山下敦弘監督)、『きみの色』(山田尚子監督)、『窓ぎわのトットちゃん』(八鍬新之介監督)、『屋根裏のラジャー』(百瀬義行監督)で、全12作品のうち1/3を占める。近年にない本数で存在感を発揮する。
 また斬新な表現や映像にフォーカスするもうひとつの長編コンペティションのコントラシャン部門には、『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』(古賀豪監督)が選ばれた。国内では完成度の高さから当初予想を超える大ヒットになった本作が、世界のアニメーションの祭典でどう評価されるのか気になるところだ。

 2020年代以降、長編映画重視を強めているアヌシーだが、2024年はその方向をさらに強めることになりそうだ。今年からコンペティションの対象にはならない公式上映の新部門「アヌシー プレゼンツ」を設けるのは大きな改革だ。世界中からジャンルを超えて、特に若い世代にアピールする作品を選んだとする。
 昨年までも招待上映やイベント上映はあったが、それが新たな部門に再編されたかたちだ。日本からは『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』(永岡智佳監督)と『SANDLAND』(横嶋俊久監督)、『がんばっていきましょい』(櫻木優平監督)の3作品、こちらも日本アニメの上映が多い。
 
 もともとコントラシャン部門は、アウト・オブ・コンペティションとされていた上映作品にもアワードの機会を与えるとの趣旨で2019年に立ちあがったはずだ。しかし、わずか5年でさらにアウト・オブ・コンペティションの「アヌシープレゼンツ」が加わる。
 これで2024年はオフィシャルコンペ部門12本、コントラシャン部門11本、アヌシープレゼンツ部門12本、これだけで新作映画は35本にもなる。これは近年の長編アニメーションの制作増加を反映しているとみられる。今回、長編コンペティションには100作品以上の応募があったという。
 この他にオープニング作品で『La Plus Précieuse des marchandise』、イベント上映で『ウルトラマン ライジング』や『Vice-Versa 2』のプレミア上映、『トランスフォーマー/ONE』、『怪盗グルーのミニオン超変身』、『インサイド・ヘッド 2』といった娯楽大作も並ぶ。アニメーション映画の祭典を演出する。

 長編アニメーション映画が増える理由のひとつが、新たに制作に挑戦する新興国のスタジオが次々に現れているためだ。コントラシャン部門ではパキスタンの『The Glassworker』、フィリピンの『The Missing』、アヌシー プレゼンツ部門ではマレーシアの『Extinction』、タイ中国合作の『Out of the Nest』といった作品がみられる。
 もちろん著名監督やスタジオの新作も映画祭の見どころだ。オフィシャルコンペの『Flow』は2019年に『Away』で世界的に注目されたGints Zilbalodis監督の最新作、すでにカンヌ国際映画祭 ある視点部門のコンペインも発表されている期待作だ。
 『Into the Wonderwoods』はカンヌ国際映画祭審査員賞を受賞した『ペルセポリス』の共同監督Vincent Paronnaudの、『Memoir of a Snail』は『メアリー & マックス』のAdam Elliot監督の、そして『Sauvages』は『ぼくの名前はズッキーニ』のClaude Barras監督の最新作。『A Boat in the Garden』はフランスの巨匠ジャン・フランソワ・ラギオニが監督で、『The Most Precious of Cargoes』のMichel Hazanaviciu監督はフランス版『カメラを止めるな』を監督したことでも知られるベテランだ。
 日本勢も含めて、アワードの行方は全く読めないと言っていいだろう。映画祭最終日の6月15日に各アワードの受賞作品が発表される。

アヌシー国際アニメーション映画祭
https://www.annecyfestival.com/

■オフィシャルコンペティシヨン
・『Into the Wonderwoods』 
  Vincent Paronnaud、Alexis Ducord (フランス/ルクセンブルグ)
・『化け猫あんずちゃん』
  久野遥子、山下敦弘 (日本/フランス)
・『Flow』
  Gints Zilbalodis (ラトビア、ベルギー、フランス)
・『きみの色』
  山田尚子 (日本)
・『窓ぎわのトットちゃん』
  八鍬新之介 (日本)
・『Memoir of a Snail』
  Adam Elliot (オーストラリア)
・『Rock Bottom』
  María Trénor (スペイン/ポーランド)
・『Sauvages』
  Claude Barras (スイス/フランス/ベルギー)
・『A Boat in the Garden』
  Jean-François Laguionie (ルクセンブルグ/フランス)
・『屋根裏のラジャー』
  百瀬義行 (日本)
・『The Storm』
  Busifan (中国)
・『The Most Precious of Cargoes』
  Michel Hazanavicius (ベルギー/フランス)

■コントラシャン(COMPETING IN THE CONTRECHAMP)
・『Black Butterflies』
  David Baute (スペイン/パナマ)
・『Gill』
  Ahn Jae-huun (韓国)
・『Journey of Shadows』
  Yves Netzhammer (スイス)
・『Living Large』
  Kristina Dufkova (チェコ)
・『Our Crazy Love』
  Nelson Botter Jr. (ブラジル)
・『Pelikan Blue』
  László Csáki (ハンガリー)
・『Sultana’s Dream』
  Isabel Herguera (スペイン)
・『Sunburnt Unicorn』
  Nick Johnson (カナダ)
・『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』
  古賀豪 (日本)
・『The Glassworker』
  Usman Riaz (パキスタン)
・『The Missing』
  Carl Joseph Papa (フィリピン)

■アヌシー プレゼンツ (ANNECY PRESENTS)
・『Buffalo Kids』
  Juan Jesús García Galocha、Pedro Solís García (スペイン)
・『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』
  永岡智佳 (日本)
・『Diplodocus』
  Wojtek Wawszczyk (ポーランド/チェコ/スロバキア)
・『Extinction』
  Behnoud Nekooei (マレーシア) 
・『The Garfield Movie』
  Mark Dindal (米国)
・『がんばっていきましょい』
  櫻木優平 (日本)
・『Animal Tales of Christmas Magic』
  Camille Alméras、Caroline Attia Larivière、Ceylan Beyoglu、Haruna Kishi、Natalia Chernysheva、Olesya Shchukina (フランス/ドイツ)
・『Out of the Nest』
  Arturo Hernandez (タイ/中国)
・『Fox and Hare Save the Forest』
  Mascha Halberstad (オランダ/ルクセンブルク/ベルギー)
・『SANDLAND』
  横嶋俊久 (日本)
・『The Sloth Lane』
  Tania Vincent、Ricard Cussó (オーストラリア)
・『The Worlds Divide』
  Denver Jackson (カナダ)

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