6月11日から17日までフランスで開催されたアヌシー国際アニメーション映画祭は、2023年で64年目を迎えた。世界で最も歴史の長いアニメーション映画祭として知られるが、イベントのサイズでも世界最大級である。さらにその規模は近年、ますます拡張している。
映画祭を運営するCITIAは最終日、映画祭と国際見本市MIFAの今年の登録参加者が世界102ヶ国から1万5820名に達したと発表した。この数には映画チケットだけを購入する一般参加者は含まれない。過去最高であった2022年(1万3248名)をさらに19%上回り、記録を大幅に更新した。近年の世界的なアニメーション産業成長と関心の高まり、それをアヌシーが一極集中的に取り込んでいる表れと言っていいだろう。
期間中は長編、短編、テレビ作品など公式作品だけで468本が上映され、その多くが2回以上、長編コンペでは同じ作品が7回、8回も上映される。さらにセミナーやカンフェレンスの数も増えている。上映会場も増やしているがそれだけでは間に合わず、2023年は会期をこれまでの6日間から7日間に延ばして対応した。
アヌシーのさらなる関心は教育である。学生向けのプログラムの拡大も顕著で、今年はMIFAの巨大な仮設テントの隣に新たなテントが登場、「MIFA CAMPUS」専用会場としてセミナーやワークショップの出来る複数のスペースを用意した。
こうした拡大路線が集客効果を発揮し、映画祭により多くの関心を集め、アニメーション文化や産業の向上に大きな貢献を果たしていることは確かだ。
一方でいくつか懸念されることもある。たとえばすでに3日間から4日間に延長されているMIFAでは、開催疲れもみられる。4日目の会場がかなりガランとした雰囲気だった。MIFA参加代金も値上がりしているし、1日延びることでスタッフの滞在費などのコストも嵩む。
大規模予算の有名プロデューサーや監督、アニメーターに大きくスポットがあたる一方で、インディーズ作家の存在は相対的に薄くなっている面もある。多様化を目指したはずの映画祭が、むしろ大衆受けに飲み込まれる危険はないだろうか?
それでもアヌシーは、年に一度、ここに来れば国境を越えてあらゆるアニメーション関係者と出会える唯一の場所だ。今後もそうした機能は他のどの映画祭、見本市、イベントも寄せつけないに違いない。
映画祭の終了と共に、早くも来年、2024年の開催も決定した。2024年6月9日(日)から15日(土)までの7日間、2024年以降も従来から1日長い日曜日スタートの体制を続けることになりそうだ。
また毎年実施する国・地域の特集では、「ポルトガル」にフォーカスする。2023年のメキシコに続き、ラテンの熱い盛り上がりになりそうだ。