『ポーの一族』や『残酷な神が支配する』など、数々の傑作マンガを世に送り出してきたマンガ家・萩尾望都が米国アイズナー賞の「コミックの殿堂(Hall of Fame)」に選出された。2022年7月22日、米国サンディエゴ市で開催中のコミコン・インターナショナル内のアイズナー賞授賞式で発表された。
アイズナー賞は米国コミック業界が前年に活躍した優れた作品、スタッフを顕彰するものだ。最優秀作品や最優秀アーティストを事前に選ばれた候補の中から選ぶ。さらに業界に貢献した人物の顕彰も大きな役割のひとつである。「コミックの殿堂(Hall of Fame)」と呼ばれるアワードはなかでも代表的なものだ。
コミックの殿堂は、毎年2つの方法で選ばれる。ひとつは主催者による審査委員が物故者や独自の基準で選出する人物たち。もうひとつは事前の挙げられた複数の候補者の中から、業界関係者が広く投票するものである。萩尾望都3年連続ノミネートされてきたが、3度目で決定した。
今年の候補者は17人おり、その中から6人が選ばれている。毎年候補者には米国の大物作家が並ぶ。海外作家の萩尾望都にとっては有利な条件とは言えないが、その代表作は米国でも翻訳出版されており、その実力が広く認められていたことが理由だ。
投票による選出では、これまでに日本からは2012年の大友克洋、2014年の宮崎駿、2018年の高橋留美子が選ばれており、萩尾望都は4人目となる。このほか審査員により、手塚治虫、小池一夫、小島剛夕の3名も選出されている。
アイズナー賞では、このほかにも日本関係の受賞があった。最優秀海外作品賞(アジア)では、伊藤潤二の『死びとの恋わずらい: 伊藤潤二傑作集』が選ばれている。
この部門は候補6作品が全て日本の翻訳マンガで、他に『チェーンソーマン』(藤本タツキ)、『怪獣8号』(松本直也)、『ロボ・サピエンス前史』(島田虎之介)、『SPY×FAMILY』(遠藤達哉)、『ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜』(麻生羽呂(原作)、高田康太郎(作画))があったが、その中から最も支持を集めた。
最優秀ペインター(マルチメディアアーティスト)には、アメリカンコミックの『モンストレス』の作画を務める日本のアーティストのタケダ・サナが受賞。18年に続く2度目の受賞で、18年には最優秀カバーアーティストも受賞しているから、もはやアイズナー賞の常連と言っていいだろう。
変ったところでは、最優秀アカデミック/研究書賞を受賞した『Comics and the Origins of Manga: A Revisionist History(コミックと漫画の起源:修正主義者の歴史)』がある。ラトガース大学出版から発刊された意欲作で、日本マンガの歴史と欧米カルチャーの関係性に着目した内容になっている。
アイズナー賞
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