プロダクション I.GやWIT スタジオなどを持つアニメ製作大手IGポートの業績が堅調だ。2021年4月9日に21年5月期第3四半期の決算を発表したが、売上高は小幅増加、利益は大幅な伸びとなった。
第3四半期までの連結売上高は68億9400万円で0.7%増とほぼ前年並みであったが、営業利益は5億5700万円(59.1%増)、経常利益は5億7500万円(65.3%増)、純利益は4億2700万円(137.8%増)と利益面が大きく伸長した。
こうした業績を受けて通期業績予想も、上方修正された。売上高は95億8800万円から102億2200万円に、営業利益は4億6200万円から5億4900万円に、経常利益は4億7800万円から5億7200万円へ、当期純利益は2億5900万円から4億1000万円にそれぞれ引き上げられる。期末まで2ヵ月を切っていることから、ほぼ予想どおりの決算となるとみられる。
業績見通し引き上げは電子書籍を中心とした出版事業の好調に加え、版権事業で来期売上げを予定したものの一部が今期の計上になったためである。IGポートの通期売上高が100億円を超えるのは初となる。
業績を牽引しているのは、出版事業と版権事業である。出版事業の売上高は14億2900万円(32.1%増)、営業利益が2億7800万円(139.6%増)だ。電子書籍市場の好調がIGポートにまで及んでいる。特に電子書籍は利益率が高く、利益の拡大に貢献している。特に「異世界転生」をテーマにしたコミカライズ作品が好調としている。
版権事業は売上高15億5000万円(51.1%増)、営業利益は4億2300万円(96.8%増)だ。製作投資の拡大もあったが、利益は大幅な増加となった。主要タイトルは製作出資比率の高かった『GREAT PRETENDER』、『ヴィンランド・サガ』、さらに『進撃の巨人』、「攻殻機動隊」シリーズなどである。
一方でアニメーション制作をする映像制作事業は厳しい。前期は通期で黒字転換したが、今期は第3四半期までに再び赤字に沈んでいる。
売上高は37億3600万円(18.0%減)、営業損失が4700万円発生した。CG制作費や外注費が高騰しており、制作期間も長期化している。一部作品では改善がみられるが、作品によっては受注損失引当金を計上したとしている。新型コロナ感染症の拡大からの影響は言及されていない。
主力作品はいよいよ公開時期も決まった劇場作品『鹿の王』、TVアニメシリーズ『ドラゴン、家を買う。』などである。