制作進行とアニメーターをマッチング ウェブサービスで登場

大峰山前鬼坊

 アニメーション制作会社のアニメーターへの仕事依頼と発注・受注をインターネット上で実行するサービスがこの6月よりスタートした。横浜市に拠点を持つ薄山館は、2020年6月15日に「大峰山前鬼坊」と名付けたクラウドソーシングサービスをリリースした。
 「大峰山前鬼坊」では、ウェブ上で制作進行とアニメーターの仕事をマッチングさせる。逼迫しがちな作画スケジュールを円滑にし、アニメーターの作画の単価向上も目指す。

 国内で一般的な2Dアニメは、作品の要となる映像の動きをアニメーターの描く絵で創りだす。しかし近年はアニメ制作本数の増加に加えてアニメーターの人材不足もあり、制作現場が逼迫し、それが制作スケジュールの遅れにつながっているともされる。
 アニメーターにはフリーランスが多い。人手不足の一方でタイミング的に仕事が空くこともあり、それを避けるためにキャパシティを超える仕事を受けることも少なくない。そうしたアニメーターに仕事を発注数するのがアニメーション制作管理を担当する制作進行と呼ばれる職種だ。しかし制作進行もフリーランスのアニメーターの仕事を充分把握できないため、手が空いたタイミングで発注しきれない。

 「大峰山前鬼坊」では、まずアニメーターが作業可能なスケジュールをサイト上に公開する。発注側はそれを見ながら空いた日時で発注依頼をかけられる。アニメーター側ではそれをもとに、仕事を引き受けるか、しないかを決める。
 「大峰山前鬼坊」を導入することで仕事の途切れを回避すると同時に、過度な受注も避けられる仕組みだ。アニメーター側で最低希望単価を設定できるほか、依頼が多ければ競争原理が働き受注単価の引き上げも期待できる。フリーランスのアニメーターの仕事の効率アップにつながる。
 薄山館では、サイトを利用することで煩雑な電話での営業から解放される、作画に必要な各種素材の受け渡しもGoogleドライブやファイルトラックを使うことでスムーズになるともする。

 薄山館はこれまでに制作進行の支援特化したアプリ「八天狗シリーズ」や、CUT管理表アプリ「愛宕山太郎坊」、ラッシュチェックとリテイク票自動作成アプリ「相模大山伯耆坊」などをリリースしている。いずれもアニメーション制作をよりスムーズに進行させることを目的にしたものだ。サービスの概要は公式サイトにて確認出来る。また登録をする場合も、サイトを通じて行う。
 アニメーション制作とアニメーターのミスマッチに目をつけた新サービスは、うまく回れば大きなインパクトがある。まずは他のマッチングビジネスと同様に、スタート段階でどの程度の利用者を確保できるかが成功の鍵になるだろう。

「大峰山前鬼坊」
https://oominesanzenkibou.com/

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