GKIDS、日本アニメ映画旧作の充実目指す 活発なライセンス獲得

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 米国の映画配給会社GKIDSが、日本のアニメ映画のラインナップ拡充に動いている。2019年5月30日、GKIDSは新たに原恵一監督の『河童のクーと夏休み』、スタジオ4℃のオムニバス映画『Genius Party』と『Genius Party BEYOND』、そして岩井俊二監督の『花とアリス殺人事件』の北米配給権を獲得したことを明らかにした。
 『河童のクーと夏休み』『Genius Party』の日本公開は2007年と12年前、『Genius Party PARTY BEYOND』は2008年、『花とアリス殺人事件』は2014年、いずれも旧作となる。GKIDSはこれらの作品は劇場公開はぜずに、DVDやブルーレイのビデオソフトで発売する。

 GKIDSは2008年に設立された米国の中堅配給会社だ。取扱い作品をキッズやファミリー向け、国内外の良質のアニメーション映画に集中させている。映画祭や都市部を中心とした小規模限定公開で作品の評判を高め、作品を売り出すマーケティングを得意とする。
 作品選びにも定評があり、これまで11作品を米国アカデミー賞長編アニメーション部門にノミネートさせた実績がある。このなかには『かぐや姫の物語』、『思い出のマーニー』、『未来のミライ』といった日本アニメもある。

 一方で近年は事業拡大にも意欲的で、また映画興行でも上映館数を増やすなど急速に拡大している。ロサンゼルスでの新しい映画祭「Animation is Film」をスタート。売上的には頭打ちになったビデオソフトだけでなく、映画配給、イベントを重視する。作品獲得も増えており、世界の映画祭で話題になったアニメーション映画の米国配給の多くが、GKIDSに集まる。
 日本作品重視もそのひとつだ。作品数が豊富で、ファンの多い日本アニメはビジネスとしてもリターンが大きく、外せないラインナップになっているようだ。昨年は細田守監督の『未来のミライ』の北米配給権を獲得し、米国アカデミー賞ノミネートに送り込んだ。また先日は新海誠監督の『天気の子』の北米配給権の獲得も発表している。
 両監督の前作はいずれも日本アニメの有力配給会社ファニメーションが配給していた。公開前から積極的に手を挙げることで、日本アニメ映画の大作・有力作のメジャーな買い手として存在感が増している。

 GKIDSのさらなる展開が、旧作ライブラリーの充実となる。もともと2011年にそれまでディズニーが取り扱っていたスタジオジブリ作品をまとめて引き継いだ実績があり、旧作の活性化のノウハウはある。過去作を充実させることで、長編アニメーション映画はGKIDSとの認識をさらに強固にする。
 日本にとってもそうした傾向は悪いものでない。ファン向けのテレビアニメ、劇場アニメは売れても、一般層やアニメファン以外の映画ファンもターゲットにいれた長編は、これまで北米で売り難かった。それをGKIDSが担うのであれば有難い。日本アニメの新たな展開に結びつくのか、GKIDSは今後ますます目が離せない会社となりそうだ。 

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