米国の日本マンガの翻訳出版が、2013年以降は順調に拡大していることが分かった。米国で日本カルチャーの振興と普及を目指すSPJA (The Society for the Promotion of Japanese Animation)は、このほどコンテンツビジネス会社Nonlinear Worldの協力を得て「State of the U.S. Manga Market(米国のマンガ市場の現状)」と題した白書を発表した。2018年の米国における日本マンガの売上げやヒットタイトル、関連各社の動向を調査したものである。
発表によれば、現地でグラフィックノベルと呼ばれる単行本形式の日本マンガの翻訳書籍の売上高は、2017年比で7.24%増となった。これは2013年以来6年連続の増加になる。キッズ向けを除くアダルト・グラフィックノベル全体は前年比7.11%減だから、日本マンガの好調が際立つ。
白書では具体的な売上金額は述べられていないが、調査のベースになったICv2の発表する2018年のグラフィックノベル全体の売上高は6億3500万ドルである。白書ではグラフィックノベル全体に占める日本マンガの割合を23.01%としており、ここから約1億4600万ドル(約160億円)の売上が推定できる。
さらに全体の10%から15%を占めるとされるデジタル出版が計算から除外されている。これも加えると米国での日本マンガ市場は180億円前後とみて良さそうだ。年間2億ドルを超えた2006年、07年には及ばないが、堅調といえる。
米国のマンガ市場は、2000年代半ばに大きな盛り上がりをみせた。しかし2000年代終りになるとブームが去り、さらにネット上の海賊ファイルの氾濫で急激に売上げを減らした。これが2012年に底を打ち、再び成長軌道を描いているというわけだ。
白書は近年の成長の最大の理由に、アニメの効果を挙げる。『僕のヒーローアカデミア』や『進撃の巨人』などアニメで人気となった作品がマンガの売上げにつながっている。
実際に2018年の売上部数ランキングでは、1位から7位までを『僕のヒーローアカデミア』が占めた。また7位には『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』3巻、15位には『SPLATOON』1巻とゲーム関連も強い。それ以外では10位には『東京喰種トーキョーグール』1巻、13位に『RWBY』、17位に『ドラゴンボール超』第2巻。
目を惹くのは小学館・集英社・ShoPro系のVIZ Mediaの活躍で、上位50タイトルのうち47タイトルを占めている。残り3タイトルは40位の『FAIRY TAIL』1巻(KODANSHA COMICS)、45位の『ベルセルク』1巻(DARK HORSE)、そして50位の『美少女戦士セーラームーン』1巻(KODANSHA COMICS)である。
VIZ Mediaは日本マンガ売上高の半分49.55%のシェアを持ち、圧倒的な1位となっている。2位は2016年に日本のKADOKAWAの子会社となったYen Pressの16.33%、3位は講談社系のKODANSHA COMICSで13.82%、上位3社を日系企業が占めた。
KODANSHA COMICSは看板タイトルの『進撃の巨人』が依然ほどの勢いがなくシェアを落としているとみられる。講談社系列はKODANSHA COMICSのほかにVERTCAL(2.99%)もあるが、成長著しいライトノベル部門があるYen Presに勢いがある。
今回の白書は、SPJAのビジネスカンファレンスのチーム「Project Anime」の活動の一環である。Project Animeは、米国のアニメ・マンガ産業のビジネス部門の発展を目指し毎年、東京とロサンゼルスでビジネスイベントを開催している。
また調査を担当したNonlinear Worldは、デル・レイやクランチロール、VIZ Mediaなどでマンガビジネスの経験が深いダラス・ミドー氏が運営している。
米国の日本マンガに特化したビジネスレポートは今回が初の試みになる。かなり充実した内容だけに、今後も継続的な発表が期待される。
State of the U.S. Manga Market
http://project-anime.org/wp-content/uploads/2019/04/State-of-the-U.S.-Manga-Market-2018-1.pdf
Project Anime http://project-anime.org/