日本のマンガ・アニメが世界で人気を博している。しかし正規のコンテンツ提供はファンの数の多いヨーロッパや東アジア、北米といった地域に偏りがちだ。
そうしたなかで国内有力出版社のひとつ白泉社は、人口の多い潜在マーケットに目を向ける取り組みに乗り出した。2019年1月18日、白泉社が運営するマンガアプリ「マンガPark」のアフリカ版「Manga Park W」がローンチした。第1弾として、アフリカのなかでも人口が多い大国であるケニア共和国、ナイジェリア連邦共和国の2ヶ国で配信を開始する。
配信作品は、スタート段階で7作品。『ベルセルク』、『ヴァンパイア騎士』といった海外でとりわけ人気のタイトルを中心に『桜蘭高校ホスト部』、『花ざかりの君たちへ』、『暁のヨナ』、『会長はメイド様』、『デトロイト・メタル・シティ』といった強力作品が並ぶ。作品は今後順次追加していく。
アプリのダウンロード、利用は無料。一部アプリ内課金があり、日本のアプリと同じビジネスモデルが導入されている。
白泉社は少女マンガ誌「花とゆめ」や「LALA」、青年誌「ヤングアニマル」などを刊行する有力出版社。1973年に少女マンガを中心とする新会社として集英社より分かれるかたちで設立された。しかし現在は幅広いマンガジャンルを扱う。代表取締役会長を長年、集英社の少年ジャンプなどで活躍してきた鳥嶋和彦氏が務めている。
「マンガPark」は白泉社のマンガ集めた公式アプリで、白泉社が自ら運営する。2017年8月にスタートし、現在までのダウンロード数は300万を超える。
海外向けの日本マンガアプリは数が多いが、国内の出版社が自身で運営するものは数が少ない。そのなかでも日本とのエンタテイメントビジネスのつながりの薄いアフリカを市場とするのは異色だ。アフリカでは南アフリカなど一部の地域以外では、日本マンガはとりわけメジャーとは言えないからだ。
それだけに今回の試みは挑戦的である。しかしアフリカは若年人口が多く、今後の経済成長が見込まれる。初期配信地域となったケニアとナイジェリアだけで人口は約2億3000万人にもなる。
日本マンガの公式コンテンツの十分ないなかで、公式アプリを投入することで、先行して市場を獲得する狙いがありそうだ。白泉社は「アフリカ市場において海賊版コンテンツの流通を未然に防ぎ、日本のマンガ文化を楽しんでもらうため」としている。