2019年劇場公開アニメ 積極的な東宝と松竹、アニプレ/角川/エイベックスが大攻勢

映画ビジネスのニュース

■劇場公開・上映本数は高水準で安定
 2018年もアニメの劇場映画が活発だった。一方で2019年の劇場上映予定作品もかなり出揃っている。そこで毎回恒例の2019年公開・劇場上映予定の日本アニメをリストにまとめてみた。
 リストは2018年12月30日現在の判明分のため、最終的にはさらなる公開決定や、逆に公開延期などで本数は変動するとみられる。例えば2017年初頭に本サイトでは53タイトルを公開予定として挙げたが、日本動画協会が先日発表した同年の公開本数は84タイトルであった。

 現段階で2019年公開・上映(ODS)が発表されている国内アニメは51本だ。2016年の同時期の集計では47本、2017年が53本、2018年が55本。単純な比較では前年比4本減だが、4月26日公開の4本立て「東映まんがまつり」を1本としたためタイトル数だと54になる。
 過去4年間とほぼ同水準である。テレビアニメ制作本数はここ数年高水準で頭打ちだが、劇場アニメも同様なのだ。
 例年シリーズが必ず上映される『それいけ!アンパンマン』の新作、秋期のプリキュアシリーズ新作などは未発表。9月以降公開作品を中心に今後も上映作品の発表があるとみられる。

■映像ソフトメーカーが劇場配給事業を強化
 2019年の特長は、配給会社の多様化だ。邦画配給市場は東宝が全体の過半数を占めるが、アニメでは近年配給事業の参入が増えている。2019年は現在のリストだけで15社がアニメ配給を手がける。
 2018年に『若おかみは小学生!』で邦画アニメに参入したギャガは、2019年にも学童向けの『映画コラショの海底わくわく大冒険!』を配給する。3月公開の『グリザイア:ファントムトリガー THE ANIMATION』は、関西放送局のMBSアニメーションが、角川ANIMATIONと共同配給に参加する。

 新規参入で勢いが目立つのが、映像ソフトメーカー系の企業だ。2017年はアニプレックスが『ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』で25億円超の大ヒットを飛ばしたが、2019年も「劇場版 Fate/stay night [Heaven’s Feel]」シリーズ、『劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』、『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』、『冴えない彼女の育てかた Fine』などで配給事業が定着している。
 現在はこれにKADOKAWAとエイベックスが追い上げる。KADOKAWAは角川ANIMATIONのレーベルで5本を投入、エイベックス・ピクチャーズは人気シリーズの「KING OF PRISM」のほか『劇場版 王室教師ハイネ』、『劇場版 トリニティセブン』などテレビシリーズの劇場展開に積極的。映像ソフトメーカー系の配給は小規模公開が中心だが、エイベックスは『ユーリ!!! On ICE 劇場版:ICE ADOLESCENCE』では東宝と共同配給する。

■それでも強い東宝、注目の松竹メディア事業部
 大手配給会社もアニメに積極的だ。東宝は大規模公開以外にも、東宝映像事業部が中小規模配給を手がける。配給本数はわかっているだけでも合わせて10本以上と最大だ。
 松竹もメディア事業部配給で、こうしたビジネスを踏襲している。「宇宙戦艦ヤマト」、「ガンダム」、「テニスの王子様」、「銀河英雄伝説 Die Neue These」などシリーズものが多いこともあり、松竹全体ではこちらも年間10本以上になる。

 一方でクロックワークスは『LAIDBACKERS-レイドバッカーズ-』、東京テアトルは『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』と各1作品。いずれもオリジナルの色合いが濃い作品だが、本数は少ない。ワーナーブラザースも現在発表されているなかでは、人気テレビアニメの展開である『劇場版 ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか オリオンの矢』の1作品のみである。
 大規模な全国公開作品は東宝・東映・松竹の3社、小規模公開は東宝映像事業部、松竹メディア事業部、もしくは映像ソフトメーカー系の配給という流れが強まっている。

■劇場オリジナル企画の少なさが課題
 多くの作品に劇場上映のチャンスが広がることは、喜ばしいことではある。しかし、上映作品の形態を細かくみると楽観はできない。
 映像ソフトメーカーや東宝映像事業部、松竹メディア事業部が手がけるのは、かつてであればテレビシリーズ、OVAで展開されたような作品が大半だ。観客が集められる知名度の高い人気作であれば、テレビやDVD/ブルーレイよりも劇場上映がビジネス的に効率的との判断だ。映像ソフト市場が縮小傾向のなかでこれに拍車がかかる。

 2019年にテレビアニメからの展開やシリーズのないオリジナリティの高い企画となる作品は10本に満たない。『あした世界が終わるとしても』(櫻木優平監督)、『LAIDBACKERS-レイドバッカーズ-』(橋本裕之監督)、『きみと、波にのれたら』(湯浅政明監督)、『天気の子』(新海誠監督)、『HELLO WORLD』(伊藤智彦監督)、『プロメア』(今石洋之監督)である。
 テレビと異なる劇場映画としてのアニメの表現とは? その可能性に挑戦する場は必ずしも多くない。2018年の公開ラインナップから見える課題だ。

【2019年国内公開・上映予定のアニメ映画】
1月4日
「ラブライブ!サンシャイン!!The School Idol Movie Over the Rainbow」 (松竹)
「劇場版総集編 メイドインアビス 【前編】旅立ちの夜明け」 (角川ANIMATION)
1月12日
「劇場版 Fate/stay night [Heaven’s Feel] II.lost butterfly」 (アニプレックス)
1月18日
「劇場版総集編 メイドインアビス 【後編】放浪する黄昏」 (角川ANIMATION)
1月25日
「PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.1 罪と罰」 (東宝映像事業部)
「あした世界が終わるとしても」 (松竹メディア事業部)
2月1日 
「映画コラショの海底わくわく大冒険!」 (GAGA)
2月8日
「劇場版 幼女戦記」 (角川ANIMATION)
「劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>」 (アニプレックス)
2月9日
「コードギアス 復活のルルーシュ」 (ショウゲート)
2月15日
「PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.2 First Guardian」 (東宝映像事業部)
「劇場版 ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか オリオンの矢」 (ワーナーブラザース)
2月16日
「劇場版 王室教師ハイネ」 (エイベックス・ピクチャーズ)
3月1日
「映画ドラえもん のび太の月面探査記」 (東宝)
「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第七章 新星篇」 (松竹メディア事業部)
3月2日 
「KING OF PRISM Shiny Seven Stars I プロローグ×ユキノジョウ×タイガ」 (エイベックス・ピクチャーズ)
3月8日
「PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.3 恩讐の彼方に__」 (東宝映像事業部)
3月15日
「えいがのおそ松さん」 (松竹)
「映画しまじろう しまじろうとうるるのヒーローランド」 (東宝映像事業部)
「グリザイア:ファントムトリガー THE ANIMATION」 (角川ANIMATION/MBSアニメーション)
3月16日
「映画プリキュアミラクルユニバース」 (東映)
3月23日
「KING OF PRISM Shiny Seven Stars II カケル×ジョージ×ミナト」 (エイベックス・ピクチャーズ)
3月29日
「劇場版 トリニティセブン」 (エイベックス・ピクチャーズ)
4月5日 
「テニスの王子様 BEST GAMES!! 乾・海堂vs宍戸・鳳 大石・菊丸vs仁王・柳生」 (松竹メディア事業部)
4月12日
「名探偵コナン 群青の拳」 (東宝)
4月13日
「KING OF PRISM Shiny Seven Stars III レオ×ユウ×アレク」 (エイベックス・ピクチャーズ)
4月19日
「映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン ~失われたひろし~」 (東宝)
「劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~」 (松竹)
4月26日
「東映まんがまつり」 (東映)
2019年春
「甲鉄城のカバネリ 海門決戦」 (松竹メディア事業部)
「LAIDBACKERS-レイドバッカーズ-」 (クロックワークス)
5月4日 
「KING OF PRISM Shiny Seven Stars IV ルヰ×シン×Unknown」 (エイベックス・ピクチャーズ)
2019年初夏
「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」 (アニプレックス)
6月14日
「劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEキングダム」 (松竹)
6月15日
「ガールズ&パンツァー 最終章 第2話」 (ショウゲート)
6月21日
「きみと、波にのれたら」 (東宝)
2019年6月
「フレームアームズ・ガール きゃっきゃうふふなワンダーランド」 (ポニーキャニオン)
7月12日
「ミュツーの逆襲 EVOLUTION」 (東宝)
7月19日
「天気の子」 (東宝)
8月9日 
「劇場版 ONE PIECE STAMPEDE」 (東映)
2019年秋
「HELLO WORLD」 (東宝)
劇場版「冴えない彼女の育てかた Fine」 (アニプレックス)
2019年 
「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」 (東京テアトル)
「プロメア」 (東宝映像事業部)
「ユーリ!!! On ICE 劇場版:ICE ADOLESCENCE」 (東宝=エイベックス・ピクチャーズ)
「この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説」 (角川ANIMATION)
「銀河英雄伝説 Die Neue These 星乱」第1章 (松竹メディア事業部)
「テニスの王子様 BEST GAMES!! 乾·海堂vs宍戸·鳳 大石·菊丸vs仁王·柳生」 (松竹メディア事業部)
「劇場版 ガンダム Gのレコンギスタ」
「蒼穹のファフナー THE BEYOND」全12話
新作「プリンセス・プリンシパル」全6章
2019年? 
新作「劇場版 アンパンマン」
プリキュア新作映画(秋期)

【2020年公開予定】
2020年1月 
「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン(仮題)」 (松竹)
早春 
「リョーマ! The Prince of Tennis 新生劇場版テニスの王子様」 
2020年
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」 (東宝=東映=カラー)
「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」 3部作

【2019年以降予定】 
「ビブリア古書堂の事件手帖」
「交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション3」 (ショウゲート)
「ガールズ&パンツァー 最終章」第3話~第6話 (ショウゲート)
「銀河英雄伝説 Die Neue These 星乱」第2章 (松竹メディア事業部)
「銀河英雄伝説 Die Neue These 星乱」第3章 (松竹メディア事業部)
「劇場版 Fate/stay night Heaven’s Feel 第3章」 (アニプレックス)
「美少女戦士セーラームーン Crystal」<デッド・ムーン編>前編
「美少女戦士セーラームーン Crystal」<デッド・ムーン編>後編
「えんとつ町のプペル」
劇場版「SHIROBAKO」
「劇場版 ハイスクール・フリート」
映画「ゆるキャン△」
「Re:ゼロから始める異世界生活 氷結の絆」 
「Fate/Grand Order:第六特異点 神聖円卓領域 キャメロット」
「僕はロボットごしの君に恋をする」
「海獣の子供」

関連記事

アーカイブ

カテゴリー

ピックアップ記事

  1. AnimeCanvas
     2024年5月23日、ソニーグループは都内で「ソニーグループ 経営方針説明会」を開催した。代表執行…
  2. AnimeJapan2024
    ■凝った企業ブースが脱コロナ禍を演出  2024年3月23日から26日まで、東京都内で日本アニ…
  3. 第2回国際アニメーション映画祭
     新潟国際アニメーション映画祭が、2024年3月15日から20日までの6日間、新潟市内各所の会場で開…
ページ上部へ戻る