話題作「ドリフターズ」配信はAbemaTV独占、地上波同時 BDはBOX商品先行発売

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2016年10月にスタートするテレビアニメシリーズ『ドリフターズ』は、この秋の話題作だ。原作は平野耕太がマンガ誌「ヤングキングアワーズ」(少年画報社)に連載するベストセラー。島津豊久、織田信長、ジャンヌ・ダルクらなど歴史上の人物がオルテと呼ばれる異世界に辿りつき、再び戦いに明け暮れるファンタジーアクションである。
平野耕太が原作と言えば2度にわたりアニメ化された大ヒット作『HELLSING』がよく知られている。『HELLSING』は日本のみならず世界的なヒット作だけに、エッジの効いたキャラクターたちが活躍する本作への期待はむしろ海外で大きい。

そんなアニメ『ドリフターズ』だが、ビジネスでもエッジの効いた試みが続出する。9月11日に、本作の番組配信が“無料のインターネットテレビ”を掲げる「AbemaTV」での独占になることが発表された。またこの配信は10月7日23時からのTOKYO MXの最も早い地上波放送と同時スタートになる。
AbemaTVは2016年4月にIT企業のサイバーエージェントとテレビ朝日の共同出資で立ち上げたばかりのプラットフォームである。オンデマンド型でなく、テレビのような番組編成で配信するのが特徴となっている。オリジナル番組の開発にも積極的だ。
また映像配信で人気の高いアニメにも力を入れている。スタート当初から「アニメ24チャンネル」「深夜アニメチャンネル」「なつかしアニメチャンネル」「家族アニメチャンネル」の4つを設けていた。さらに7月には新作だけに特化した「新作TVアニメチャンネル」も目玉として加えた。『ドリフターズ』は、この「新作TVアニメチャンネル」の強力タイトルになる。

近年、映像配信市場が急成長するなかで、配信プラットフォーム各社が人気タイトルを囲い込む動きが強まっている。資本力の大きな外資企業はなかでも積極的で、Netflixの『亜人』やAmazon プライム ビデオの『甲鉄城のカバネリ』の独占配信などがある。これに日系の各社が対抗している。
ところが今回は開始半年のAbemaTVが秋の大型タイトルで勝負にでた。AbemaTVによる独占配信は『ドリフターズ』が初だ。伏兵の登場に、配信タイトル獲得競争はまた一段と激化しそうだ。

地上波放送と同時配信もサプライズである。近年、放送後から配信までの期間は短くなりつつあるものの、テレビ放送優位は依然続いている。そのなかでテレビ放送と配信の同時スタートは大きな冒険である。
一方AbemaTVは、オンデマンドでなく、編成型のため通常の配信と異なる部分もある。番組はいつでも観られるわけでなく、最新話数が毎日の放送枠のなかで配信される。こうした新しいかたちが受け入れられるかも今回、問われるだろう。

さらにアニメビジネスにとってもうひとつ大きい映像ソフトでも新たなやりかたが導入される。商品はまず、シリーズ終了とほぼ同時の2016年12月24日に特装限定生産のBlu‐ray BOXを発売する。その後、通常版Blu‐ray全6巻が2017年1月から6ヵ月連続で順次発売される。現時点でDVD版、単巻での限定版Blu‐rayは予定されていない。
これまでであれば、テレビ放送から数か月後に、単巻のBlu-ray/DVDを順次発売、さらにその後は期間を置いてBOX商品の発売とのパターンが多かった。近年は単巻商品を発売せずにBOX商品のみのケースも増えているが、映像のリテイクなどが出来ない放送終了と同時は異例だ。シリーズ全体が放送開始の時点で、ほとんど完成していることになる。放送と並行して制作することが大半の国内アニメ業界では珍しい。

加えて、作品のご当地と位置付ける全国8都市(函館、新宿、宇都宮、名古屋、岐阜、梅田、京都、鹿児島)では4話ずつ3回にわけた有料の先行上映会を実施する。一部の話数は劇場イベント上映でまずリリースされるかたちだ。
テレビ放送、配信、映像ソフト、そして劇場イベントと、それぞれを時代に合わせて新たにリリース方法を組み替える。『ドリフターズ』は、映像だけでなく、ビジネスの切れ味も目が離せない。

アニメ『ドリフターズ』
http://www.nbcuni.co.jp/rondorobe/anime/drifters/index.html

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