大手映画会社の東宝が、映画・映像企画のSTORY株式会社と業務提携契約を締結したと発表した。両社は、企画・製作分野で協力して事業を進める。提携を通じて東宝は、劇場映画、テレビアニメの企画開発の強化、ラインナップの拡充を図る。
STORY株式会社は、東宝の映像事業部映像企画室長の古澤佳寛氏、映像企画部の川村元気プロデューサーらが2017年9月に設立した。代表取締役社長には古澤氏が就任、川村氏も代表権のある取締役プロデューサーとなる。
東宝のスタッフがスピンアウトし、新会社を設立したかたちである。資本金は1千万円、東宝も一部出資する。東宝は今回の業務提携契約で、STORYから優先交渉権を獲得する。いわゆるファーストルック契約で、STORYの企画に対して最初にビジネスの提案をすることが出来る。
古澤氏、川村氏は3 月1 日付で東宝からSTORYに出向、副所属として東宝にも籍を置く。STORYと東宝は密接なビジネス関係を持つ。
STORYの事業は映像作品の企画・製作。代表取締役の古澤佳寛氏は、東宝の映像事業部で活躍してきた。映像事業部はもともと映像パッケージ、劇場でのイベント上映などを主要事業としてきた。しかし近年はアニメ事業に力をいれて、映画だけでなくテレビアニメ業界でも存在感を増している。『僕のヒーローアカデミア』、『弱虫ペダル』、『血界戦線』などのヒット作を続出する。また大ヒット作『君の名は。』も企画した。事業部門の売り上げは急伸している。古澤氏はこの立役者のひとり。STORYがアニメ分野でも、今後活躍することが期待される。
川村氏は『君の名は。』、『おおかみこどもの雨と雪』、『告白』、『モテキ』など実写・アニメ映画のヒット作、話題作のプロデュースを務めている。若手の映画プロデューサーとし注目されてきた。
有力スタッフがスピンオフのかたちでプロデュース会社を設立するのは、業界にも驚きを与えそうだ。しかし、海外では大手映画会社出身者による独立プロデュース会社は珍しくない。そうした会社が大手の配給会社と提携することも多い。今回のSTORYは、そうしたビジネスを日本に持ち込むことになる。
独立プロデュース会社の利点は、小回りが利き、自由な立場、発想で企画を考えられることだろう。プロデューサーへのリターンも大きくなる。その替わり、プロデューサーの負うリスクも大きい。一方、東宝は社内だけでは難しい新しいアイディアを期待できる。また企画開発のコストは新会社が持ち、生まれた企画を採用しないことも出来るのでフリーハンドの余地が大きいのも利点だ。
アニメ映画、テレビアニメでも存在感の大きな東宝とそこから飛びだすSTORYが、今後どのような企画を打ち出すのか。大きな関心を呼びそうだ。