デンマークの地方都市に出現した 日本アニメ・マンガを一望する展覧会に驚愕

「KAWAII & EPIKKU」

 デンマークの首都コペンハーゲンから飛行機で1時間、さらに空港から車で何十分もいったところにヴィボー(Viborg)の街がある。人口10万人に満たない小さな都市の建設は、8世紀のヴァイキングの上陸に由来する。
 2017年の秋、この歴史ある街を日本のアニメ・マンガが席巻している。ヴィボー・アニメーション フェスティバル2017(Viborg Animation Festival 2017)が開催され、日本とデンマークの外交関係樹立150周年を記念した大型特集を組んでいるからだ。期間中はアニメ、マンガ、ゲームといった日本のポップカルチャーのイベントが次々に実施されている。
 ヴィボーにはヨーロッパでも著名なアニメーション教育機関アニメーション・ワークショップ(The Animation Workshop)がある。同機関が数年前より、日本のアニメーションとの交流を深めていることも理由だ。

 このなかで目玉企画ひとつになっているのが、市内中心部のヴィボー博物館で9月10日より開催されている展覧会「KAWAII & EPIKKU」である。日本のマンガとアニメの歴史と広がりを一望する野心的な企画だ。これまで北ヨーロッパで開催されたアニメ・マンガの展覧会では過去最大規模となった。
 このほど現地を訪れて、多くの関連企画に接する機会を得た。そこで現地レポートとして、まずこの「KAWAII & EPIKKU」を紹介したい。

 「KAWAII & EPIKKU」会場に足をいれた最初の感想は驚きだ。これまでにない規模とはいえ、多くの展示品を日本から運び、それをきちんとした文脈で紹介するのはかなり難度が高い。「KAWAII & EPIKKU」は、そうした多くのハードルを見事に乗り越えている。
 まずは規模である。会場は3階建ての建物の全てを占有し、数え切れないほどの展示室が次々に連なる。そのなかにいくつものテーマ、作家、作品が設けられている。さらに圧倒されるほどのマンガの原画(複製原画含む)やアニメの設定、キャラクター商品やフィギュア、階段にはアトムの絵が描かれているおり、手塚治虫のコーナーにはデンマークで作られた巨大な手塚キャラクターのカーペットまで置かれている。ワークショップや講演のためのスペースも用意する。
 じっくりと見ようとしたら、かなりの時間がかかるだろう。北欧の地方都市に、日本文化で満載された空間がこの規模で出現したことに圧倒された。

 そしてもうひとつの驚きは、テーマの確かさと、その中に日本の外から見た時の客観視された日本カルチャーの批評が含まれていることである。日本では別の文脈に分けてしまいがちなものが並列的に語られているのだ。北ヨーロッパから見た日本のアニメ・マンガ文化はこうした文脈に見えるのだとの発見もあった。
 それは北斎マンガから始まり、大藤信郎、手塚治虫、そして田中達之、森本晃司、ドワーフのコマ撮りアニメーション、映画『この世界の片隅に』にまで至る。ここにサンリオの可愛いカルチャーやフィギュア、玩具まで加わるのだ。まさに日本アニメ・マンガを一望、一挙に理解に相応しい。
 会場は日本からかなり遠いが、ヨーロッパからであれば、他のイベントと合わせて、現地に行く価値はあるだろう。そして何よりも重要なのは、日本のアニメ・マンガ文化への理解がこうした場所にまで広がっている2017年の現状である。日本のアニメ・マンガ文化は、世界のなかでとりわけホットな現象のひとつなのである。


ヴィボー・アニメーション フェスティバル2017(Viborg Animation Festival 2017)

http://animationsfestival.dk/

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