TYOが新経営体制を発表 AOI Pro.との経営統合に向けて社長交代

ファイナンス決算

広告映像大手のティー・ワイ・オー(TYO)は、2016年8月29日に代表取締役の異動と新経営体制を発表した。これは7月11日に発表されたAOI Pro.との経営統合を視野にいれたものだ。
AOI Pro.は広告映像制作の業界第2位、TYOはほぼ同規模の業界第3位となっている。両社は2017年1月4日に新たに共同持株会社であるAOI TYO Holdings 株式会社を設立、TYOとAOI Pro.はその子会社となる。AOI TYO Holdingsは現在業界第1位の東北新社に並び、広告映像制作業界は3強体制から2強体制に移行する。

TYOの新しい経営体制は、共同持株会社の経営体制も踏まえた。TYOの創業メンバーで、現代表取締役社長の吉田博昭氏は、代表権のない会長になる。同時にAOI TYO Holdingsの代表取締役に就任する。AOI TYO Holdingsは代表取締役2名体制で、AOI Pro.の現代表取締役社長執行役員の中江康人氏も代表取締役になり、二人がグループを率いる。
TYOも新たに代表取締役2名体制となる。専務取締役の早川和良氏が代表取締役社長に、常務取締役の上窪弘晃氏が代表取締役副社長に就く。上窪氏はTYO アニメーションズの取締役も務めている。TYOの異動は10月27日を予定している。

7月に発表された両社の経営統合は、映像業界を驚かせた。業界2位と3位の合併で、主力の広告映像分野では1位の東北新社を抜き去るためだ。
企業統合の多くは、業績の冴えない企業をより好調な企業が買収する救済型や、事業拡大を目指す企業が他社を傘下に収める吸収型が多い。しかし、TYOは2016年7月期の第三四半期までで、売上高214億円4400万円、営業利益10億4800万円、当期純利益4億9800万円と堅調だ。AOI Pro.も2016年3月期決算で売上高320億6000万円、営業利益24億9100万円、当期純利益10億9800万円と業績は安定している。今回はシェアの拡大や新事業の進出のための攻めの姿勢が目立つ。実際に新会社の陣容は代表取締役2名体制に加えて、バランスのとった役員構成と、対等な立場での統合であることが分かる。

両社は経営統合について、主力のテレビCM制作のマーケットが今後大きな拡大が見込まれないことを挙げている。グループを形成することで、「より大きなシェア」「より強い交渉力」「より強靭な資本」が可能になるという。
今後は人材教育や業務の効率化、共同仕入れ、ポストプロダクション部門や撮影機材レンタル部門の相互融通などを通じた収益力とコスト競争力の強化を狙う。同時にVR やAR などの新しい映像制作技術開発、動画マーケティング、海外事業など新事業の強化を目指す。
TYOは「たまゆら」シリーズや『戦国無双』などを制作するTYOアニメーションズもグループ会社としている。またドワーフ事業部を通じて、『どーもくん』などのコマ撮りアニメーションも制作する。これらの事業体制は、当面大きな変化はなさそうだ。

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