2017年4月28日、ソニーは2017年3月期の決算を発表した。エレクトロニクスからゲーム、映像関連機器、金融、半導体、映画、音楽にまで及ぶ連結売上高は7兆6032億5000万円に及ぶ。前年比で6.2%減となった。営業利益は2877億200万円(1.9%増)、当期純利益は2516億1900万円(17.4%減)、当期純利益は732億8900万円(50.4%減)、減収減益である。
しかし、事業分野が多岐にわたるため、分野ごとでは業績はばらつきが大きい。エンタテイメント分野だけでも、PS4のソフトウェアの売上高が伸びたゲーム部門が増収増益、逆にのれんの減損処理が大きかった映画部門は減収赤字と差が大きい。
アニメ関連では、音楽分野が注目される。音楽分野は、音楽制作、音楽出版事業で日本に本社を持つソニー・ミュージックエンタテインメント ジャパン(SME)グループ、米国のSME関連会社、ソニー/ATVミュージック・パブリッシング、さらにEMIミュージック・パブリッシングをカバーする。これにアニメを含む映像・メディアプラットフォーム事業から構成される。
ソニーグループ全体では、映像事業は映画部門で米国の本社を持つソニー・ピクチャーズ エンタテインメントグループにあたる。しかし、SMEはアニメ事業子会社のアニプレックスを通じて日本からアニメを中心とした映像事業を展開し、音楽分野に含めている。近年はこの映像関連事業が成長している。
2017年3月期に音楽分野の売上高は6477億円、前期比で6.4%増となった。売上高増加は、映像メディア・プラットフォームと音楽制作の大幅な増収のためだ。決算発表では、まず映像メディア・プラットフォーム事業に言及。日本でのスマートフォンゲームアプリ「Fate/Grand Order」を要因に挙げる。同タイトルは非常に好調で、大きな利益貢献を果たしたとする。
営業利益の減益は、前期はコンテンツ配信会社The Orchardの株式持分の再評価利益181億円が計上されていたためだ。全体では実質、成長軌道と言っていいだろう。
映像メディア・プラットフォームは、とりわけ過去2年間で急成長している。2015年3月期の売上高は873億8300万円、16年3月期にはこれが1185億8800万円、17年3月期には1752億7800万円になった。映画部門のテレビ製作事業が2718億8600万円であることを考えれば、かなりのボリュームだ。
映像メディア・プラットフォームにはアニプレックスグループやZeppグループのほか、光ディスク製造のソニーDADC、商品物流・管理のジャレード、さらに一部の海外事業も含まれる。しかし、いずれも成長分野とはいえず、映像メディア・プラットフォーム事業の成長はアニプレックス、Zeppが牽引しているとみられる。
一方で、音楽分野の2018年3月期については慎重な見通しだ。年間売上高は6300億円、営業利益は750億円とみる。減収減益を予想する。
音楽・映像パッケージ、さらにデジタルダウンロードも売上が減少すると予想する。一方で、デジタルストリーミングの配信売上は増加すると見る。エンタテイメント業界のビジネスモデルの変化のスピードに業績は左右されそうだ。