2016年8月に劇場公開、空前の大ヒットとなった新海誠監督の『君の名は。』が、2017年4月7日から北米公開となった。配給は日本アニメ・映画を得意とするファニメーション(Fanimation)が担当、公開スクリーン数は311である。
初週末の興行収入は米国の映画興業情報サイトBOX OFFICE MOJOによれば181万3782ドル、日本円で2億円近くとなった。週末興収ランキングは13位と、1000スクリーンから4000スクリーンで公開される作品が並ぶ中で大健闘となった。
なかでも1スクリーン当たりの売上の高さが特長となっている。『君の名は。』のスクリーンアベレッジは週末3日間で5832ドル。これを超えたのは、上位50作品のなかでは興収1位の『The Boss Baby』、第2位の『美女と野獣』(実写)、そして56館で公開した『Gifted』の3作品のみだ。
順調なスタートもあり、2週目に入ってもスクリーン数は292と当初の水準を維持している。公開10日目になる4月16日までで、興行収入は336万9779ドル(約3億7000万円)に達した。
これは米国で公開された日本アニメとして歴代12位にあたる。『君の名は。』より上には歴代1位の『ポケモン:ファーストムービー』のほか、『遊戯王』、『デジタルモンスター』、『ドラゴンボールZ』などキッズ作品、そして数々の宮崎駿監督作品や『借りぐらしのアリエッティ』のスタジオジブリ作品が並ぶ。『君の名は。』は、『もののけ姫』、『イノセンス』、『バケモノの子』などを上回った。
またこれらの作品はいずれもワーナー・ブラザース、ブエナビスタ(ディズニー)、FOXといったハリウッドメジャーの配給である。12位まででメジャー以外の配給は、『君の名は。』と同じくファニメーションが配給する『ドラゴンボールZ 復活の「F」』のみがランキングしている。
配給のファニメーションは、1994年に設立された。日本アニメに特化した配給会社として知られている。90年代から2000年代にかけては、日本アニメのビデオ、DVD、ブルーレイの発売で大きなシェアを握ったトップ企業だ。
劇場配給は多角化の一環として始めた。しかし、日本映画というニッチなジャンルを扱うことから、スクリーン規模は大きくなく、1日のみ、2日間のみのイベントとしての上映会が大半だ。300館規模の継続的な公開はほとんどなく、ファニメーションにとって今回の『君の名は。』は大きな冒険だった。しかし、そうした努力は報われた。
また興行以上に注目されるのが、作品への高い評価だろう。米国の映画批評サイトとして有名な「Rottentomatoes」では、批評家による評価(TOMATOMETER)で98%が肯定的、観客の評価(オーディエンス・スコア)でも95%という驚異的な数字を叩き出し、トップページでも紹介する。いずれも少数の批評でなく、批評家では81人、観客では5616人を集計したものだ。
とりわけ批評家では、Rottentomatoesが重視するトップ評論家(TOP Critic)が16人含まれている。うち15人が高評価を与えた。この中にはヴァラエティ、ハリウッドレポーター、タイムアウト、ヴィレッジボイス、ワシントンポスト、ロサンゼルスタイムズ、ニュヨークタイムズなどに掲載する著名評論家が並ぶ。劇場興行の規模は必ずしも大きくなかったが、『君の名は。』、そして監督「新海誠」の名前を北米の映画業界に強烈に印象づけたという点で、『君の名は。』の北米興行は大きな成功を収めたと言っていいだろう。