東宝2017年3月期 売上前年並みも過去最高利益 アニメ製作80億円で倍に

ファイナンス決算

 国内最大手の映画会社の東宝が、2017年4月14日に2017年2月期の決算発表をした。2016年の国内映画業界は年間興行が過去最高を記録するなど活況を呈したが、それは東宝の業績にも反映している。前年に続き増収増益となり、利益は過去最高となった。
 連結売上高は1.8%増の2335億4800万円と前年並みであったが、営業利益は502億2300万円(23.4%増)、経常利益は515億6200万円(21.4%増)、当期純利益は332億5200万円(28.7%増)。利益面での伸びが大きかった。

 国内興行の好調は、TOHOシネマズを中心とする映画興業事業にダイレクトに現れている。東宝の映画興業事業の売上高は、790億2500万円(前年比7.5%増)、営業利益は110億100万円(21.8%増)である。東宝作品のほか、『ズートピア』、『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』、『ファインディング・ドリー』、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』などのヒット作が牽引した。 
 映画製作・配給の映画営業事業は売上高461億8800万円、こちらは6.2%の減少となる。一方、利益面では152億7900万円(13.1%増)と伸びている。売上高は輸出収入、テレビ収入、映画企画の減少が響いた。一方で、邦画配給を中心に配給が15.2%増となった。また、『君の名は。』、『シン・ゴジラ』の大ヒットもあり、製作出資からの受取配分金が57億1000万円(136.8%増)と急伸している。

 大きな伸びでは、映画事業内のアニメ製作事業が躍進している。売上げは80億8800万円(97.5%増)と前年からほぼ倍増した。『君の名は。』、『僕のヒーローアカデミア』が中心となったほか、『刀剣乱舞ー花丸―』、『ハイキュー!!2』、『傷物語〈Ⅱ熱血篇〉/〈Ⅲ冷血篇〉』が好調である。
 映像事業全体では、売上高1545億7300万円(2.1%増)、営業利益は337億7500万円(29.5%増)。パッケージは99億2100万円(13.7%減)、出版・商品は41億7200万円(6.4%減)と弱く、実写製作は14億7700万円(26.4%増)、ODS事業が25億5000万円(21.4%増)と堅調だ。

 このほか演劇事業は、売上高155億8600万円(4.1%増)、営業利益は32億6800万円(6.1%減)であった。
 不動産事業の売上高は614億4200万円(1.1%減)、営業利益は168億3000万円(13.8%増)と、引き続き高収益部門となっている。不動産賃貸が高稼働している。

 東宝は決算に合わせて「成長にむけた戦略方向性」と題した中期経営戦略も発表している。ここでは大きな方向性として「コンテンツ権利ビジネス」、「プラットフォームビジネス」=劇場運営、「不動産賃貸ビジネス」を挙げている。これまでの映画配給、演劇興行に加えて、この3事業のさらなる拡大を目指す。
 「コンテンツ権利ビジネス」では、“アニメなど有力なコンテンツの企画開発や権利の確保”も掲げられており、東宝のアニメ重視は今後も続きそうだ。

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