「SPY×FAMILY」「ハイキュー!!」大ヒット、IGポート今期利益が過去最高に

ファイナンス決算

 アニメ製作大手のIGポートは、4月12日に明らかにした2024年5月期第3四半期決算を受けて、2024年5月期の通期業績予想を上方修正した。第3四半期までの業績は売上高と営業利益は前年比で微減であるが、通期予想では売上げと利益の両方が前年を上回る。
 連結売上高の予想は過去最高であった22年5月期の118億7200万円に迫る115億9800万円。営業利益は11億2500万円、経常利益は12億5200万円、当期純利益は10億7200万円と、いずれも10億円を超える。これらは過去最高水準になる。
 
 利益の伸びが大きいのは、利益率の高い版権事業の売上拡大にある。製作出資し、グループ企業のWIT STIDUOが制作もする『SPY×FAMILY』のヒットが特に大きい。
 期間中に第2期の放送・配信があり、配信・商品ライセンスなどが好調だった。また2023年12月22日に公開した劇場版『SPY×FAMILY CODE:White』が大ヒット、さらに来期計上予定であった劇場売上高の一部が前倒しになったことも利益を引き上げた。
 同様にプロダクション I.Gが制作し、製作出資もする映画『ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』の劇場売上の一部が今期計上される。第3四半期まででは業績に反映されていないが、4月12日時点で興行収入が92億円に達するメガヒットだけに、大きな数字が期待される。

 ただし個別セグメントを見ていくと、必ずしも全てが好調との訳ではない。映像制作事業は第3四半期までで売上高が45億6300万円(2.3%減)、営業損失は4億1000万円と赤字転落している。
 一部の作品において制作期間の長期化、CG制作費、外注費などの高騰があり、受注損失引当金を計上した。損失が前回予想を上回った。とりわけ海外からの受注作品の制作期間が長期化し、受注損が積みましになった。

 版権事業は売上高16億5900万円(25.8%増)、営業利益は8億8200万円(202.2%増)だ。新作も好調だが、減価償却が終わった過去作品の版権収入の貢献も大きかった。第3四半期までの版権売上上位作品は『SPY×FAMILY』、『進撃の巨人』、『魔法使いの嫁』、『ハイキュー!!』など。
 第4四半期以降は、『ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』、『怪獣8号』、『シンカリオン チェンジ ザ ワールド』などの有望作品が控えている。さらに来年度以降は、『君に届け 3RD SEASON』、『異世界スーサイド・スクワッド』、『THE ONE PIECE』、『ムーンライズ』、『ターミネーター』などが続く。

 出版事業の第3四半期までの売上高は18億1200万円、前年同期比で17.1%減は関連会社リンガ・フランカの解散・清算によるものだ。営業利益は4億9200万円で2.7%減。『魔導具師ダリヤはうつむかない~Dahliya Wilts No More~』、『王太子に婚約破棄されたので、もうバカなふりはやめようと思います』が好調だった。

 またIGポートでは、2024年5月31日を基準日として、株式分割をすることを決議した。1株を4分割する。
 近年の業績好調から、IGポートの株価は2022年末頃より上昇が続いている。直近で1株6350円、高値では6840円をつけている。2022年の安値985円から6倍以上になった計算だ。株式分割をすることで、株式購入のしやすさと流通株式を増やす狙いがありそうだ。

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