出版・映像・ゲーム・ウェブなど多様なメディア事業を抱えるKADOKAWAが、2021年10月29日に22年3月期第2四半期の決算発表をした。第2四半期までで増収増益、通期連結の利益予想を上方修正する好調ぶりだ。
連結売上高は1048億1100万円(7.4%増)、営業利益は99億3800万円(26.6%増)、経常利益106億400万円(30.3%増)、当期純利益は71億1600万円(36.7%増)である。上方修正の理由として出版分野での海外事業やライセンス事業、デジタル書籍事業の成長を挙げている。
出版部門の売上高は651億1700万円(8.3%増)、営業利益は93億7900万円(100.4%増)と利益の伸びが特に大きい。出版部門の好調は海外事業、デジタル出版に牽引されている。紙出版では北米のマンガ・ラノベ出版のYenPressを中心に伸びている。海外向けのデジタル配信の「BOOK☆WALKER海外ストア」でも、第2四半期の3ヵ月だけで3億円以上の売上があり前年同期比では67%増の高い伸びを実現した。
また権利許諾収入が伸びたこと、返品率が低下していることも収益に貢献した。ヒット作は『テスカトリポカ』、『魔力の胎動』、『パンどろぼう』、『文豪ストレイドッグス(21)』などだ。
映像部門も売上高162億4500万円(22.8%増)、営業利益が10億2700万円(22.0%増)と増収増益である。前年比2桁成長のアニメ事業が牽引している。配信向けに『蜘蛛ですが、なにか?』、『聖女の魔力は万能です』が貢献、ヒット作として『Re:ゼロから始める異世界生活』、『この素晴らしい世界に祝福を!』が挙げられた。
アニメ製作強化は続いている。今期はすでに第1四半期に12本、第2四半期に12本と新作を投入。前年の7本、11本を上回った。24本のうちテレビシリーズが18本、映画が5本、OVAが1本となる。主力タイトルは、『Re:ゼロ』のほか『ひぐらしのなく頃に 卒』、『探偵はもう、死んでいる。』、『聖女の魔力は万能です』。第3四半期以降は『劇場版 ソードアート・オンライン-プログレッシブ星なき夜のアリア』、『見える子ちゃん』を期待作としている。
海外を中心に事業の伸びが続くアニメ事業だが、ビジネス状況は流動的で必ずしも安心できない。通期予想では、中国での規制対応によるアニメ作品のスケジュールの延期が発生しているとする。これに伴って権利許諾などのビジネスも遅れも生じている。
今回の決算と同時発表された中国テンセントグループとの資本業務提携には、そうした状況を乗り越える意図もありそうだ。この提携ではKADOKAWAのアニメ作品への共同出資、ゲーム化に共同で取り組むとしている。テンセントグループのプラットフォームの活用も目指す。
海外売上高は第2四半期までで、123億800万円と前年比13%の伸びとなった。このうちマンガ・ライトノベルを中心とした出版が67億9300万円、映像が38億7000万円となっている。全体の半分長が北米である。伸び率は高いが、売上高に占める割合は全体の10%強にとどまっている。今後の成長余地は、まだありそうだ。