第3Q決算好調IGポート、通期利益予想を上方修正 版権事業で総合力発揮

ファイナンス決算

 アニメ事業大手のIGポートの収益力が増している。2024年1月12日に2024年5月期第2四半期の決算を発表したが、利益面での好調が際立った。
 連結売上高は52億2900万円(7.0%減)と前年並みであったが、営業利益は5億9800万円(25.5%増)、経常利益は7億4900万円(46.1%増)、当期純利益は5億4700万円(43.0%増)となった。利益率の高い版権事業の伸びが理由だ。
 第2四半期までの業績を受けてIGポートは、通期連結業績予想の修正を発表した。売上高は106億3800万円から104億4000万円に引き下げる一方で、営業利益は7億4800万円から8億9100万円に、経常利益は8億1300万円から11億100万円に、当期純利益は6億4600万円から10億900万円に引き上げる。経常利益と当期純利益は過去最高であった前年も上回る見込みだ。

 業績を牽引する版権事業の第2四半期までの業績は、売上高が10億5000万円と23%増、さらに営業利益は1億6800万円から5億100万円に急伸した。前年同期の約3倍の水準だ。
 版権事業で売上が最も大きかったのは『SPY×Family』で、『進撃の巨人』、『魔法使いの嫁』、『ハイキュー!!』、『天国大魔境』が続く。大きなヒットとなり計画を上回った『SPY×Family』や『天国大魔境』などの新作の貢献も大きかったが、『SPY×Family』でも売上全体の対するシェアは9.5%に過ぎない。逆に上位8タイトルまでが売上シェア5%~10%の間に並ぶ。複数の人気作品からバランスよく売上げている。
 少数のビッグタイトルへの依存することが多いアニメ業界のなかで、ポートフォリオ型の経営を実現している。特に今期は減価償却の終わった作品からの収入が多く、利益を引き上げた。

 一方で、アニメーション制作を中心とする映像制作事業は、売上高が28億円(11.5%減)、そして営業損失は1億2200万円の赤字に転落した。引き続き、制作期間の長期化、CG制作費、外注費の上昇などが影響している。一部の作品では受注損失引当金を計上した。制作費の高騰に、会社の想定が追いつかない状況が垣間見える。
 期間中の主要作品は『怪獣8号』、『THE ONE PIECE』、『君に届け 3RD SEASON』、『ムーンライズ』、『ターミネーター』、『劇場版SPY × FAMILY CODE: White』、『ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』、『SPY × FAMILY Season 2』など。
 強力なラインナップだ。制作事業だけでは赤字であったとしても、こうした強力な作品が将来的に新たな版権収入を生み出すことになりそうだ。

 出版事業は売上高12億2800万円(14.6%減)、子会社で電子書籍事業のリンガ・フランカの解散・清算が響いた。営業利益は2億9000万円(5.6%減)、前年比マイナスだが利益率高い水準を保つ。
 『魔導具師ダリヤはうつむかない ~Dahliya Wilts No More~』、『王太子に婚約破棄されたので、もうバカのふりはやめようと思います』が好調だった。

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