アニマックスとキッズステーション、2大アニメ専門チャンネルが経営統合

テレビ

 アニメ放送メディアのドラスティックな再編が始まった。2017年2月23日、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(SPEJ)と三井物産は、それぞれが子会社とするアニメ専門チャンネルのアニマックスとキッズステーションを経営統合することを明らかにした。
 両社は2017年3月31日に、新たに株式会社AK Holdingsを設立する。株式会社アニマックスブロードキャスト・ジャパンと株式会社キッズステーションの2社を子会社に置く。複数のアニメ専門チャネルを運営する持株会社となる。

 アニマックスの加入世帯数は863万、有料チャンネルでは国内最大だ。また、キッズステーションも803万世帯に達している。
 国内アニメ専門チャンネルの1位と2位として、長年視聴者数、有力番組の獲得で激しい競争をしてきた。そうした2社の経営統合は、アニメ業界、放送業界に大きな驚きを与える。

 アニマックスは、1998年に世界的なメディアコングロマリットであるソニー・ピクチャーズグループの日本法人であるSPEJと、国内のアニメ制作会社のトップ3であるサンライズ、東映アニメーション、トムス・エンタテインメント、そしてアサツー ディ・ケーのアニメ製作子会社日本アドシステムズの共同出資により設立された。有力企業を株主とすることで人気タイトルを数多く調達し、アニメ分野の国内トップチャンネルの地位を築いている。
 一方、キッズステーションは、アニマックスよりさらに早い1993年に設立された老舗だ。三井物産のほか、東京放送ホールディングス、ジュピターテレコム、ホリプロが出資する。ジュピターテレコムはKDDIと 住友商事を親会社にし、近年は映画・アニメビジネスへの攻勢を強めている。

 AK Holdingsの株主・出資構成は明らかにされていないが、経営統合はアニマックス主導色が強い。新会社の代表取締役にはSPEJ、そしてアニマックス代表取締役の滝山正夫氏が就任する。さらに3月31日付で、滝山正夫氏はキッズステーションの代表取締役にも就任する。一人で、SPEJ、AK Holdings、アニマックス、キッズステーションの4社の代表取締役を兼任する。
 これは三井物産が出資を残したまま、経営権をソニー・ピクチャーズへ移管したように映る。経営の中核でないアニメ・放送事業から三井物産が一歩引いたかたちだ。事業の海外展開の面で協力するとみられる。
 アニマックスにとっては、キッズステーションとの統合で経営に規模の効果がでる。また、有料アニメ放送局間での競争状況が弱まることで、事業のリソースを多角化に向けられる。特にビジネスの競合として急激に台頭する有料映像配信にも対抗することも可能になる。

 経営統合についてSPJEと三井物産は、実際に共に取り組む事業として映像配信を挙げている。しかも、日本だけでなく海外も視野に入れているとする。これまでも海外にアニマックスブランドの放送や配信サービスはあったが、いずれも米国ロサンゼルスに本社を持つソニー・ピクチャーズの事業で、日本のアニマックスは経営にタッチしていない。しかも、2000年代半ばには積極的にグローバル展開をしたが、近年は伸び悩んでいる。今度は日本からのビジネスになりそうだ。
 海外向けのアニメ配信では、先日、先行企業のクランチロールが有料会員100万人突破を発表した。映像配信大手のAmazon プライムも日本アニメ専門の有料配信チャンネル「Anime Strike」を17年1月にスタートさせた。AK Holdingsがこれらに対抗する勢力になるのか、今後の展開が注目される。

 もちろんAK Holdingsのライバルは配信に限らない。国内でも放送事業を展開するディズニーやカートゥーンネットワークなどの放送局、さらに国内の数々の有料映像配信プラットフォーム、AbemaTVのような新たなかたちの配信サービスもそうである。
 そうした企業に対抗する鍵が、アニメ作品の製作や商品化である。アニマックスは、これまでにもマーベル・アニメシリーズや『戦う司書 The Book of Bantorra』、『戦場のヴァルキュリア -VALKYRIA CRONICLES-』、『VIPER’S CREED』などの製作に参加している。近年は、アニメ製作は減っていたが、今後は同社が主導のアニメ製作も増えそうだ。

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2017年3月25日発売
『誰がこれからのアニメをつくるのか? 中国資本とネット配信が起こす静かな革命』

数土直志(著) 
(星海社新書) 税込:950円

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