映画大手の東宝は、東京プライム市場上場で映画興行・不動産事業などを手がける東京楽天地に対して公開買付けを開始すると発表した。2023年12月7日から2024年1月24日まで、一株6720円で応募のあった株式を買い取る。
TOBの表明時点で、東宝は東京楽天地の株主第1位で持分法適用関連会社としている。またグループ会社の東宝コスチューム、TOHO シネマズ、東宝東和などと合わせて株式全体の23.07%保有する。公開買付け終了後は同社を完全子会社化し、上場廃止を目指す。買付される側の東京楽天地の経営側は、今回のTOBについて賛同意見を表明している。
買い付け価格の6720円は、2023年12月6日の終値4435円に57%プラスと大きなプレミアムをつけた。公開買付け予定の全株式を買い取ると最大で約232億円になる。
東宝に次ぐ株主第2位の阪急阪神ホールディングスは、今回のTOBの鍵となる。19.31%の株式を持つが、今回のTOBには応募しない。その代わりにTOB成立後に東京楽天地が、同社の保有株式を自己株式取得で買い取る予定だ。今回のTOBには賛成の立場となる。
東京楽天地は1937年に、東宝の創立者でもある小林一三が設立した。いわばふたつの会社は兄弟会社にあたる。年間売上はグループで前期決算で約90億円、当期利益は約15億円と安定して利益をだす。
TOHOシネマズ錦糸町東宝の運営などの映画興行と楽天地ビルなどの不動産管理と、東京楽天地の事業と東宝の事業は重なりが大きい東京楽天地は東宝にとって、短期間で相乗効果が見込め、統合による効率化、収益の拡大が可能な企業だ。
一方、東京楽天地は安定事業であるが、成長期待が薄いという弱点があった。一株当たりの純資産であるPBRは1倍を割っている。東京楽天地は成長イメージの強い東宝の完全傘下になることで、新たな成長を目指すことになる。