2023年11月2日に発表した決算短信で、日本テレビホールディングスは10月6日付で日本テレビが子会社化したスタジオジブリの追加株式取得価額が約100億円であることを明らかにした。同社は9月21日に追加取得により株式保有比率を42.34%まで高め、スタジオジブリを子会社化すると発表していた。
また決算短信からは、日本テレビが従来からスタジオジブリの株式14.86%を保有していたことが分かった。追加取得した株式は全体の27.48%となる。これに対して日本テレビは100億6500万円を支払った。株式取得は複数の個人株主から行ったことから、取引相手やその保有比率は明らかにされていない。
日本テレビの支払い対価から、スタジオジブリ全体の企業価値が約366億円と評価されたことが分かる。国内でM&A取引されたアニメスタジオとしては過去最高の評価額とみられる。これは上場企業であるIGポートの約200億円を上回るが、東映アニメーションの6000億円超に比べると大きな差がある。
スタジオジブリは宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』、『もののけ姫』など世界的なヒット作を多く制作してきた。豊富なライブラリーを持つスタジオの評価額としては割安にも見える。しかしスタジオジブリは限られた高品質の劇場アニメをじっくりと制作するため、作品制作のライン、生産量は必ずも高くない。そうした点が企業価値の算出に反映されているとみられる。
また日本テレビは株式取得原価と現在の価額と差益が40億8300万円あったと報告している。これはもともと日本テレビが保有していた14.86%の株式の取得価額と今回の評価額との差益とみられる。
従来からの保有株式は、2005年にスタジオジブリが徳間書店より独立した際に取得した可能性が高い。この時の出資金額は13億6200万円、ここから2005年時点でのスタジオジブリの評価額は約92億円と算出できる。およそ18年で、同社の企業価値は約4倍になったことになる。