「Paramount+」日本上陸はJ:COM/WOWOWと連動 外資系動画配信の競争激化

「Paramount+」はJ:COM

 日本上陸が噂されてきた米系大手動画配信サービス「Paramount+」が、いよいよ日本配信を開始する。2023年9月20日、Paramount Globalが23年12月1日からのサービス開始を発表した。
 ただしサービス提供はこれまでのNetflixやDisney+、Amazon プライムビデオなどの外資系動画配信サービスとは異なる。国内の有料放送の大手であるJ:COM、WOWOWと手を組む。すでに大きなシェアと顧客を持つサービスにバンドリング(セット販売)することで、いっきに市場開拓を進める計画だ。「Paramount+」はユーザーへのアクセスを得て、J:COM、WOWOWは人気番組のラインナップを拡充できることになる。Win-Winの取り組みと言うわけだ。

 9月20日には、パートナーのひとつJ:COMの新サービス発表会で、「Paramount+」が目玉として登場した。J:COMは10月から新たなサービス「J:COMTV シン・スタンダード」をスタートする。そのサービス組み込まれた「J:COM STREAM」のプログラムに、「Paramount+」が丸ごとはいることになる。
 記者会見の会場にはParamount Globalのアジア事業・ストリーミング代表のキャサリン・パーク氏も登壇し、J:COM代表取締役社長・岩木陽一氏と両社の取り組みの今後の展望を語った。シルベスター・スタローンが初めてドラマシリーズを主演する期待の新作『Tulsa King』のティザーを上映し、「Paramount+」の番組の魅力を紹介した。

Paramount+

 「Paramount+」はハリウッドの5大メジャーのひとつパラマウントのストリーミング部門、ウォルト・ディズニーのDisney+、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーのMAXに対抗する存在だ。NetflixやAmazon プライムビデオも含めて、定額課金型の配信サービスの顧客獲得で競っている。
 番組の目玉はパラマウントの誇る人気映画やドラマの数々である。映画では『トップガン』や『トランスフォーマー』、『ミッションインポッシブル』、ドラマでは『NCIS』や『CSI』の犯罪もの。「スタートレック」シリーズや子どもチャンネルのニコロデオン、CBSニュースもパラマウントのグループになる。
 映画・テレビでは存在の巨大なパラマウントだが、動画配信プラットフォームの整備は遅れていた。現在の「Paramount+」の名称でグローバルサービスに乗り出したのは2021年、グローバル展開も遅れており、サービスエリアは世界45ヵ国、加入者数6100万人に留まる。

 日本はアジアの有望市場だが、すでに複数の国内系、外資系が動画配信市場で厳しい競争を繰り広げている。そこで単独でではなく、すでにある有力なサービスとのジョイントでの参入との戦略になったようだ。
 このため配信作品は「Paramount+」が丸ごとスタートでなく、段階的に番組を追加していくことになる。パラマウントにとっても、J:COMにとっても人気作品を効率よく活用するかたちだ。
 一方、こうした形での日本進出のため、他社外資で見られる日本ローカルでのオリジナル番組はアニメも含めて当面なさそうだ。また「Paramount+」が日本アニメを独自に調達することも考え難い。そうした意味では、省エネ型の日本進出とも言える。

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