「スタジオジブリでクビ寸前」から始まった 鈴木敏夫×石井朋彦、アニメプロデューサー師弟トーク
- 2016/12/7
- レポート
2016年12月6日、東京・市ヶ谷のDNPプラザにて、世代の異なるふたりのアニメ映画プロデューサーがトークを行った。スタジオジブリの鈴木敏夫氏と、鈴木氏のもとでアニメのキャリアをスタートさせたクラフター取締役プロデューサー石井朋彦氏である。
『崖の上のポニョ』の主題歌のボーカルでもお馴染みの藤巻直哉氏の絶妙な司会で、楽しく、そして思わず頷いてしまう逸話でいっぱいの1時間半となった。
もともとイベントは、鈴木氏が「ジブリの仲間たち」、石井氏が初の著書「自分を捨てる仕事術」をそれぞれ上梓した出版記念として実現したものだ。ところが豪快さで知られる鈴木氏も、「今日は俺の本はいいから」と30歳以上も歳の離れた弟子を気づかう場面がチラリホラリ。
とはいえ、石井氏の著作の副題は「鈴木敏夫が教えた「真似」と「整理整頓」のメソッド」。本の題材となった本人と直接話すのだから、話題の中心は鈴木氏とスタジオジブリを巡る人たちにならざる得ない。石井氏が、次々に知られざる鈴木氏の姿を明らかにするのが爽快だ。
一方鈴木氏は、石井氏が入社当初はクビ寸前だったと明かす。現在は、クラフターのプロデューサーとして、『花とアリス殺人事件』(岩井俊二監督)や短編アニメーション『ムーム』(ロバート・コンドウ/堤大介監督)、それに宮崎駿監督の新作短編『毛虫のボロ』にも関わる石井氏だけに意外なエピソードである。
300人以上の面接の中からただ一人採用された石井氏だが、入社当時は現場から総スカンを受け、鈴木氏は「(石井氏を)クビにするか、鈴木氏が引き取るか」を現場から迫られたという。そこから本にも書かれた、鈴木氏と石井氏のやりとりが始まった。
トークでは、石井氏が学んだ仕事術を中心に、4つのテーマが掲げられた。
「仕事は公私混同」
「仲間を増やせ」
「他人に必要とされる自分が自分」
「俺がやったと言わない」
言葉にすると単純だが、実践するとなるとなかなか難しそうだ。この言葉を確実にこなし、現在につなげたのが石井氏というわけだ。
「全ての会社に好きな女性を作れ」「同世代との飲み会は止めろ」など、少し過激なより実践的なアドバイスもあった。ダンボール2箱分はメモがあるという石井氏だが、それを話した鈴木氏は忘れているものも多く、「それはいいな。」と感心する場面もたびたびあった。
さらに「仕事は公私混同」では、スタジオジブリのスタジオを東京・小金井に定めたのは宮崎駿監督の初恋の人の居住地だったからと明かすなどエンタテイナーぶりを発揮。数々のスタジオジブリ秘話がイベントを盛り上げた。
最後の質問コーナーでも、スタジオジブリや宮崎駿監督の最新の動きも紹介とサービス満載となった。CGアニメパートではクラフターも制作に参加する宮崎駿監督の最新作の短編『毛虫のボロ』は、2017年夏頃に三鷹の森ジブリ美術館で公開できるのではと。そして、先日新たに挑戦すると発表された長編作品については「完成すれば。」と、宮崎駿監督次第ではあるが、かなり前向きな様子が見て取れた。
『スタジオジブリの仕事術』 鈴木敏夫×石井朋彦 初の師弟対談
https://live.line.me/channels/80752/broadcast/233380
*トークの内容はLINELIVE スタジオジブリ公式アカウントで配信中
■ 「自分を捨てる仕事術 鈴木敏夫が教えた「真似」と「整理整頓」のメソッド」 (WAVE出版)
石井朋彦
https://honto.jp/netstore/pd-book_27970873.html
■ 「ジブリの仲間たち」 (新潮新書)
鈴木敏夫
https://honto.jp/ebook/pd_27938395.html