2023年8月30日に開示されたIGポートの「2023年5月期 有価証券報告書」が、グループ主要3社の期中の売上と利益を開示している。IGポートはアニメーション制作を中心としたエンタテイメントの持株会社で、アニメーション制作のプロダクションI.G、WIT STUDIO、シグナル・エムディ、マンガ出版のマッグガーデンなどのグループ企業を統括している。
決算短信でグループ全体の売上高、利益は発表されているが、個別企業の収益は記載されていない。有価証券報告書はグループ各社の状況を知る手がかかりとなる。
報告書で開示されたのは、プロダクション I.G、WIT STUDIO、マッグガーデンのグループ主要3社である。売上が最も大きいのはプロダクションI.Gで、2023年5月期は39億8700万円。経常利益は4億600万円、当期純利益は3億9700万円と安定した業績だ。しかし売上高は前期比約25%と大幅に減少した。逆にWIT STUDIOは37億4000万円と約34%増と売上が大きく伸びた。
売上規模の振幅が大きいのは、アニメスタジオは大型作品の完成の有無で売上が大きく変動することが理由とみられる。グループ全体でも2021年5月期の最大取引先がアニプレックス(売上高比率13.4%)、2022年5月期はNetflix(売上高比率11.6%増)、2023年5月期には東宝(売上高比率10.6%増)と入れ替わっていることからも、大型作品の動向が大きい傾向が窺われる。
プロダクションI.Gに売上規模で迫ったWIT STUDIOだが、それでも収益面では経常利益は9600万円(58%減)、当期純利益は8700万円(60%減)と前年比マイナスとなった。依然、5億2600万円の債務超過だが、2年連続の黒字化で業績回復基調と言っていいだろう。
マッグガーデンの売上高は27億4000万円(7%増)、経常利益は5億8700万円(1%増)、当期純利益は3億6500万円(1%増)だ。安定した業績だ。
有価証券報告書からは、他のグループ企業の動向も読み取れる。連結決算された出資比率の大きな製作委員会では、「蒼穹のファフナー」のふたつの製作委員会への出資比率が30%、銀河英雄伝説2 製作委員会へ35.7%、BUBBLE 製作委員会が30%の出資があることが分かる。
またCLOVERWORKS、アニプレックス、集英社と共同出資で設立した新会社JOENでは、出資比率は35%と高めになっている。
また9月1日には、IGポートは大株主の ひびき・パース・アドバイザーズの代表取締役兼最高投資責任者である清水雄也氏を顧問に迎えたと発表した。
IGポートはひびき・パース・アドバイザーズの持株比率について、2023年2月22日に大量保有報告書の変更報告書で株式保有比率6.08%保有しているのを確認しているが、2023年5月31日現在の実質所有株式数は確認出来ていないとする。
6.08%の保有が確認されれば、NTTドコモの5.2%を超えて創業者会長の石川光久氏(20.0%)、電通グループと日本テレビ放送網の各10.3%に次ぎ、第4位の株主になる。
また5月31日現在では、大株主状況でHIBIKI PATH AOBA FUNDが4.9%の株式を保有している。これがひびき・パース・アドバイザーズの保有株と重複するのかが不明だが、同一でない場合は合算した保有比率はさらに上昇する。