アニメ企業大手の東映アニメーションは、2023年6月23日に「上場維持基準の適合に向けた計画に基づく進捗状況について」を発表した。2021年12月20日に開示した「スタンダード市場の上場維持基準への適合に向けた計画」に対する進捗状況を明らかにしたものだ。
東京証券取引所は、2022年4月にこれまで5つあった市場区分を3つに再編し、それぞれの上場基準を従来よりも厳しくした。東映アニメーションは新しいスタンダード市場の上場維持条件を満たしておらず、2025年3月末までにクリアするとしている。
東映アニメーションの現在の時価総額は約5600億円、株主数は5000人を超える。スタンダード市場を代表する大型株である。上場基準の時価総額10億円、株主数400人は軽く超えているが、問題は市場で流通する株式量である。
取引所は発行済株式の25%以上が市場に流通していることを条件としている。しかし、東映アニメーションでは、政策目的で保有する大株主が多い。東映とそのグループ会社で約40%、テレビ朝日が約20%、バンダイナムコホールディングスとフジ・メディア・ホールディングスが各10%程度で、非流通株式比率は80%以上と大きい。
今回の進捗状況では、22年3月末から23年3月末までの1年間で、流動株式比率は15.5%から17.4%に上昇した。大株主の状況からは上記の大株主の持株比率がやや下がっており、少しずつ放出していることも見て取れる。
しかし1年間の比率上昇は1.9%、東映アニメーションは25年3月末までのあと2年間で、25%まで残り7.6%、この比率を高める必要がある。同社は「事業法人等に区分される株主に対し、株式の全部又は一部を売却するよう働きかけている」としているが、ハードルは低くない。
流通株式数が少ないことで、時価総額に対して株式取引は活発とはいえない。また近年の業績好調から、株価が高値圏にあることも理由だ。株式売買最低単元は100株で、現在の株価であれば株式保有には最低でも130万円以上が必要になる。個人投資家にはややハードルが高い。
東映アニメーションは、このほか親会社になる東映との親子上場という課題も抱えている。東京証券取引所は、「子会社上場を禁止はしないが、望ましい資本政策とは言い切れない」と一般的には解消を推奨している。
特に東映アニメーションは時価総額で親会社の東映の2倍以上と、異例の親子逆転状態にある。これも同社の好調な業績がもたらしたものだが、経営サイドでは悩みは大きそうだ。