映画館興行チェーンのTOHOシネマズは、全国で運営する71拠点のTOHOシネマズの鑑賞料金を2023年6月1日より引き上げる。これまで1900円の一般料金が2000円に改定されるほか、65歳以上を対象としたシニア料金も1200円から1300円に引き上げる。TOHOシネマズは2019年にも一般料金1800円から1900円の値上げをしており、4年ぶりの改定だ。
サービスデイ料金も一律の値上げとなる。レイトショーは1400円から1500円、ファーストデイ・シネマイレージデイ・TOHOウェンズデイはそれぞれ1200円から1300円と100円高くなる。ただし12月1日の「映画の日」だけは1000円の料金を維持する。手頃に鑑賞できる貴重な一日となりそうだ。
今回は、大学・高校・中学・小学生、幼児の鑑賞料金の改定はしなかった。映画館の鑑賞環境を維持することで、若年層の映画離れを起こさないよう配慮したと見られる。障がい者割引も現在の1000円を据え置く。
TOHOシネマズでは料金改定について、各種コストの上昇を理由に挙げている。近年のエネルギー価格の高騰や円安により仕入れコストが上昇していること、また人手不足もありアルバイト人件費も上昇傾向と運営コストが増加している。さらに設備投資の負担も増している。
キャッシュレス決済やモバイルチケット導入など運営の効率化は進めるが、企業努力だけでは吸収できないと判断した。TOHOシネマズでは新規出店も積極的なため、投資原資の確保の狙いもありそうだ。
映画ファンに気になるのは、同業他社がこれに追随するかどうかである。TOHOシネマズの拠点数、スクリーン数は業界ではイオンシネマに続く第2位で、またスクリーン数だけでは業界シェアは高くない。しかし配給大手の東宝と同じグループ会社であることや、駅前立地のシネコンが多いなど業界のプライスリーダーの役割を果たしている。
2019年の値上げの際には、短期間でティ・ジョイや東急レクリエーション、MOVIXなどの追随値上げが相次いだ。現在の運営費や人件費の負担増は各社共通しており、今回も追随する可能性は高い。
一方で業界最大スクリーン数を持ち、郊外型立地で他社と差別化するイオンシネマは、2019年の時はTOHOシネマズの値上げと一線を画した。現在も一般1800円を維持している。しかしTOHOシネマズが2000円に引き上げれば、同じ新作映画で鑑賞料金に200円の差がつくことになる。イオンシネマが価格差を維持した集客戦略を取るのか、やはり値上げに踏み切るのかが、今後の焦点である。