日本企業の海外展開支援をするJETRO(日本貿易振興機構)が、中国のコンテンツ関連の調査報告「中国コンテンツ市場調査」の最新版を公式サイトにて公開した。調査報告は「動画配信」、「映画・テレビ」、「アニメ」、「音楽」、「出版」、「ゲーム」、「メタバース」の7分野に及び、総ページ数は399ページの重量級だ。誰でも分野別に無料でダウンロード可能になっている。
JETROは海外展開支援の一貫としてこうした調査報告を定期的に実施しており、コンテンツ分野のレポートに実績がある。特に売上げやマーケットシェアなどの数字、関連企業の具体的な動向が豊富なのが特徴だ。
中国市場についても部分的な市場調査は定期的に発表しているが、コンテンツ全体をカバーする総合レポートは2017年以来、5年ぶりになる。
この間はコロナ禍を挟んでいること、同国でエンタテインメントの表現規制が強まったこと、中国コンテンツの成長などがあり、ビジネス環境は激変している。レポートは中国におけるコンテンツビジネスの最新の情報として活用範囲は広いはずだ。
レポートはアニメ分野については特に情報が厚い。「動画配信」、「映画・テレビ」の中でも関連情報が詳しく取り上げられているだけでなく、アニメーション分野は独立した項目として調査している。「中国のアニメに関する市場調査 2022年度」は70ページ
にもなる。
日本ではなかなか見つけにくい中国の産業関連の数字が多いのは特筆すべき点である。たとえば2021年の中国におけるアニメーションとマンガ市場価値を2200億元(4兆7000億円)と紹介している。これは日本国内の日本アニメとマンガの国内市場それぞれ1兆4288億円、6770億円を合算した約2兆1000億円の倍にもなる。一方でアニメーション市場規模は115億元(約2230億円)としている。こちらは日本の業界市場2972億円に比べるとむしろ若干小さい。
「アニメ」の調査では、日本から関心の高い配信関連の最新情報も豊富に掲載されている。「中国の動画配信に関する市場調査」では配信関連の規制が詳細に説明している。また「中国のアニメに関する市場調査」では、実際に許諾の下りた作品の一覧や実例が示されている。2021年4月期で配信大手のビリビリが申請した日本アニメ26作品のうち8作品が配信されてないといった情報だ。
再生回数による人気ランキングや中国国産シリーズアニメの状況も興味深い資料だ。さらに日本アニメの中国展開だけでなく、中国アニメーションの日本展開の動向もカバーする。
アニメ関係者は「中国のアニメに関する市場調査 2022年度」を読むだけでも、かなりの情報がアップデート出来るだろう。さらに余力があれば、マンガ関連情報が多い「出版」を読むのもお薦めだ。また『すずめの戸締まり』の大ヒットで再び関心が増している日本映画の劇場公開では、「映画・テレビ」が参考になるだろう。海外映画の許諾や配給・興行の仕組み、利益分配の構造などが詳しい。
中国コンテンツ市場調査 2022年版(2023年3月)
https://www.jetro.go.jp/world/reports/2023/02/72218cac73449251.html