昨今の世界的なマンガ人気の高まりで、日本マンガの翻訳出版・配信が急激に広がっている。作品の翻訳ニーズも拡大しているが、翻訳者の数が十分でなく、量の増加は翻訳コスト引きあげる。海外向けに日本マンガを広げたい出版各社のハードルになっている。
そんな課題を解決しようとするベンチャー企業にいま注目が集まっている。AI技術を使ったマンガ翻訳技術の研究をするMantra株式会社だ。同社がこのほど新たな資金調達を実施し、出版大手の集英社や東京大学系列のベンチャーキャピタルである東京大学協創プラットフォーム開発などが出資することになった。
資金調達は第三者割当増資によるもので、集英社、東京大学協創プラットフォーム開発のほか、AI事業特化のベンチャーキャピタルのディープコア(DEEPCORE)、スタートアップ支援のコンコードエグゼクティブグループ、ツクリエらが引受ける。調達資金総額は約1億5000万円になる。今回の出資社である集英社、ツクリエとは、両社の実施したアクセラレータープログラム「マンガテック」にてつながりを深めた。
今回の調達資金は、同社の代表的なクラウド翻訳ツール「Mantra Engine」と英語学習アプリ「Langak」機能向上と、マンガに特化した自然言語・画像処理技術の研究開発などに活用するとしている。
Mantraは2020年に設立、現在注目されている機械翻訳技術のなかでも、マンガに特化した研究開発をしている。マンガの機械翻訳は、絵とテキストの不規則な配置、独特な話し言葉、ストーリーの背景にある複雑な文脈など通常の翻訳以上に課題が多い。
マンガに特化した画像認識と機械翻訳の統合を実現することで、世界で最も高精度なマンガ機械翻訳を開発したとする。こうした成果を開発した「Mantra Engine」を2020年に公開、現在は出版社、翻訳会社、マンガ配信事業者などに広く利用されている。
低コストで迅速な翻訳システムが構築できれば、マンガ文化の世界普及も一気に加速するだろう。最新のAIテクノロジーがそれを可能にするのか、世界のマンガカルチャーにブレイクスルーを実現するのか。企業だけでなく、国内外のマンガファンからも期待を集めそうだ。
Mantra
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