映像配信プラットフォーム世界大手のNetflixは、2022年7月20日に2022年12月期第2四半期決算を公表した。この日に合わせてアニメーション事業部門でも、今後の戦略を変える大きな発表を行った。オーストラリアに本社を持つアニメーションスタジオ アニマル・ロジック スタジオ(Animal Logic Studios)の買収で合意したというものだ。
両社は『The Magician’s Elephant』と『The Shrinking of the Treehorns』といった長編作品の制作ですでにビジネス関係にある。Netflixは買収を通じて、さらに強固な関係を築く。
Netflixはこれまでも自社企画、自社スタジオでのアニメーション制作をしてきたが、アニメーションスタジオの買収はこれが初になる。買収を通じて、オリジナル長編アニメーション部門の制作基盤を強化する。
アニマル・ロジックは1991年にオーストラリアのシドニーで創業、世界に数あるCGアニメーションスタジオのなかでも老舗に数えられる。2015年にはカナダのバンクーバーにもスタジオを開設、ロサンゼルスにも拠点を持つなど、積極的に事業拡張してきた。3拠点を合わせて約800名の社員を抱える巨大スタジオでもある。
数々の長編アニメーションの大作に参加して、主要パートを担当することが多かった。参加作品には『レゴ・ムービー』、『ハッピーフィート』、『ピーター・ラビット』などがある。実写映画でも『マトリックス』や『300』などに参加している。
テレビドラマや実写映画、テレビアニメーションでは、次々にアワードを獲得するNetflixだが、アニメーション映画での実績はまだ始まったばかりである。2021年に高い評価を受けた独占タイトル『ミッチェル家とマシンの反乱』も、ソニー・ピクチャーズ・アニメーションの製作であった。
しかしNetflixが目指すのは、これまでも制作してきた『フェイフェイと月の冒険』、『クロース』、『ジェイコブと海の怪物』といった自社ブランドの大作CGアニメーションだ。こうした映画を強化するのは、すでにある有力CGアニメーションスタジオの獲得が早い。人材とノウハウがいち早く、手に入るからだ。そこですでにつながりのあるアニマル・ロジックに白羽の矢が立ったとみられる。
アニマル・ロジックにしても、大手とはいえこれまでは大手映画製作会社の制作外注先の位置づけでしかない。これまでも数々のCGスタジオが独自企画・製作による成長を目指したが、流通・配給を持たないこともあり成功例はほとんどない。Netflix傘下になることで、流通や配給・制作資金も確保したうえで、スタジオ企画の作品も出来る。
両社はつながることによって、ディズニー/ピクサーやユニバサールのイルミネーション/ドリームワークス、ソニー・ピクチャーズ・アニメーションなどのハリウッドメジャーと長編アニメーション分野で対抗出来るはずだ。