「アニメを3Dに!」 松浦社長が自ら語るサンジゲン本発売


映画『009 RE:CYBORG』が公開された時、その映像に本当に驚かされた。フルCGアニメでありながら、子どもの頃から親しんだセル画スタイルの息吹をたっぷり含んでいる。同時に、CGでしか持てない立体感、アングルも存在する。「新時代のアニメ到来!」である。
CG映像を作りだしたのは、アニメ制作会社サンジゲンだ。すごい仕事をする特別なスタジオ“サンジゲン”をとりわけ意識するようになったのはこの頃である。

ところが『009 RE:CYBORG』の公開は2012年、わずか4年前だ。11月24日発売の松浦裕暁氏の著書『アニメを3D(サンジゲン)に!』を読んで、その時間の短さと、時代の流れの早さにあらためて驚かされた。
著者の松浦氏は株式会社サンジゲン代表取締役、そして同社も含む複数のアニメ会社を統括する株式会社ウルトラスーパーピクチャーズの代表取締役も兼ねる。『アニメを3Dに!』では、松浦氏がサンジゲンの仕事や考え方、これまで、そして今後をあますことなく語っている。本の体裁を見ると会社経営者の自叙伝、あるいは企業本にも見える。しかし、むしろ過去10年間のCGアニメの世界を松浦氏と共に体感し、未来を見通す本といったほうがいいかもしれない。

『アニメを3Dに!』から伝わるのは、『009 RE:CYBORG』に代表されるスピード感である。2016年のいまサンンジゲン、ウルトラスーパーピクチャーズとそのグループ会社は、アニメ業界に大きな存在感を持つ。しかし、サンジゲンは設立からまだ10年しか経っていない。ウルトラスーパーピクチャーズ設立からだと5年に過ぎない。
それは日本のCGアニメの流れの早さを反映しており、そのなかで時代の潮流を見つけ出し、進むべき方向をいち早く掴みとるサンジゲンと松浦氏のセンスを反映している。『アニメを3Dに!』を読むことで、過去10年間の日本の“アニメ”とCGの置かれた状況が読み取れるだろう。

そして、もし本書を手にしたら、“第4章「サンジゲン」が未踏を踏む”をじっくり読んで欲しい。ここではCGアニメ会社というよりも、一企業の経営者としての松浦氏の姿が見える。
アニメスタジオと言えども感性と技術だけで成り立っているわけでない。そこには会社を支える人間同士の関係、目標に至る戦略、そして制作を維持するための経営という現実がある。夢を実現するための松浦氏の考え方が記されている。それは普段はあまり意識されないCGアニメを支えるもうひとつの車輪である。

『アニメを3D(サンジゲン)に!』
著者: 松浦裕暁 
発売日: 2016年11月24日
定価: 880円(税別)
http://ji-sedai.jp/book/publication/3d.html

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