KADOKAWAと集英社、国内を代表するふたつの出版社が新人作家のデビューにあたり、協力して世に送り出すことになった。作家の名前は坊木椎哉、1975年新潟生まれである。
11月26日にKADOKAWAより『きみといたい、 朽ち果てるまで~絶望の街イタギリにて』を刊行、同日に集英社から『最後のデートをきみと』が発売される。坊木にとってはいずれもがデビュー作、しかもそれぞれ異なる出版社との異例のかたちになっている。
もともとは坊木が2015年に集英社開催した第1回ジャンプホラー小説大賞銅賞、続いて16年にKADOKAWAの第23回日本ホラー小説大賞優秀賞を相次いで受賞したのが始まりになっている。大きな賞に続けて選ばれていることからもその実力が窺われる。
『きみといたい、 朽ち果てるまで~絶望の街イタギリにて』は、ごみ収集と死体運搬を仕事にする少年と、 似顔絵を描きの少女の淡い恋心から始まる物語。『最後のデートをきみと』は、「恋人との最後の時間」を売る女子高校生がある青年と運命的な出会いをする。
今回は同日発売だけでなく、イラストも両作品とも同じshimano (しまの)が手がけ、さらにデザインも対になっている。あたかも姉妹書のような体裁だ。同日刊行も驚きだが、こうしたタッグも異例だ。
毎年少なくない数の作家がデビューするなかで、いかの新人の作品を世に伝えるかは各社が頭を悩ませるところ。ライバルの垣根を越えた取り組みは、日本の出版社の柔軟さを示すかのようだ。