オンラインゲームの大手企業ネクソンがエンタテイメント企業投資で大きな成果を上げている。2021年3月29日、ネクソンは自社のグローバル・エンタテインメント企業への投資、保有株式の一部状況を開示した。
この投資は2020年に取締役会にて決定、同年スタートした。15億ドルを投資金額の上限に、世界のエンタテイメント企業の株式を取得する。2020年末時点には上限の58%にあたる924億円の投資を完了している。1年弱ですでに295億円もの含み益を計上しているという。
ネクソンの特徴は、日米のエンタテイメントの大企業に数社に特に投資を集中させていることだ。主な投資先は日本のバンダイナムコホールディングス、コナミ、セガサミー、そして米国のハズブロである。前年末での投資評価額はハズブロが539億円、バンダイナムコHDが298億円、コナミが205億円、セガセミーが91億円になる。合算で投資額のおよそ9割を占める。ネクソンはこれ以外の企業にも投資しているが、他の投資先企業は開示基準に満たなさないため非公開にしている。
バンダイナムコHDは玩具やゲーム、映像などの総合エンタテイメント企業で、主力ガンダムシリーズでよく知られている。コナミはゲームやスポーツ関連の総合企業、「メタルギア」シリーズで有名だ。セガサミーはゲームや遊興、映像制作の総合企業、ソニックのキャラクターの他、『名探偵コナン』や『それいけ!アンパンマン』などのアニメーション制作もする。
唯一の米国企業である玩具大手のハズブロも有力キャラクターを多く保有することは他社と同様である。「G.I.ジョー」、「マイリトルポニー」、「パワーレンジャー」を保有する。
各企業に対する持株比率はいずれも1%~2%程度になっている。ネクソンは株式取得の目的を経営支配権や事業構築が目的でないと説明する。これら持株比率からみてもビジネス上の関係構築より純投資の側面が強いことがわかる。
ネクソンは、現在の株式市場では新規IPの創出に関心が集まっており、優れたグローバルIPを保有し、育成する力のある企業の価値が見過ごされ、過小評価されていると指摘する。同社の投資はこのギャップに目をつけた。ハズブロ、バンダイナムコHD、コナミ、セガサミーはエンタテイメント業界では歴史のある大企業である。ネクソンはグローバルIPの創出と、長期にわたる成長させるノウハウに注目し、コンテンツがインタラクティブ型に移行する中で今後これらの企業がさらに飛躍するとする。
ネクソンの年間売上高は2020年で2930億円だが、利益率が高く利益が大きい。2020年の営業利益は114億円になっている。キャッシュリッチなことから、資金の有効な運用の狙いからグローバルIP投資に目をつけた。
また自社が熟知するエンタテイメント業界で優良企業を見極めて投資・運用する。ひとまずはこうした方針は大きな成功を収めている。