■市場価格にプレミア66%増しの高い評価
エンタテイメント大手のバンダイナムコグループが、M&Aを活用したビジネス強化を進めている。2019年10月9日、バンダイナムコホールディングス(バンダイナムコHD)は、アニメやキャラクターライセンス事業の創通に対して公開買付けを開始することを発表した。
バンダイナムコHDは創通の株式の22.79%をすでに保有するが、残り全株式の取得を目指し、完全子会社化を視野に入れる。公開買い付けにあたっては、大株主である創業者の那須雄治氏とその資産管理会社であるナスコから賛同を得ている。現在の持株と両者の株式を合わせるだけで、株式の保有比率は70%を超えることになる。また創通の現経営陣も、今回の公開買付けに対する賛同を表明した。
公開買い付けの募集は10月10日にスタート。1株当たりの買付価格は10月8日のJASDAQスタンダード市場の終値1865 円に対して3100円と66%超の大きなプレミアムがつけられた。全株式を取得すると、買付金額は約350億円となる。
かなり思い切った価額としたが、それだけバンダイナムコグループの創通の事業に対する評価の高さが現れている。市場価格から66%高い価格でも完全子会社化したいわけである。
■ガンダムのライセンスビジネスが一本化
バンダイナムコグループの買収の最大の目的が、創通の持つ「ガンダム」シリーズのライセンス管理ビジネスにあるのは、業界関係者の一致した見方だ。「ガンダム」のライセンスはバンダイナムコグループにあると思われがちだが、当初バンダイはライセンスを受けて玩具を製造・販売する立場であった。作品のライセンスはアニメーション企画・制作のサンライズと企画に関わった創通にあった。
1994年にサンライズ(当時日本サンライズ)を子会社化することで、ガンダムの権利を獲得した。2000年には創通の株式の21.7%を取得したが、本格的なグループ会社化には至らなかった。今回は創通をグループに本格的に取り込むことで、ガンダムのライセンスの全てをグループ内に集約する狙いがある。バンダイナムコHDも今回の公開買い付けが実現すれば「ガンダム」シリーズの価値を最大化出来ると、述べている。
■オーナー企業だった創通、将来をバンダイナムコに託す
創通は1965年に読売巨人軍の専属代理店として球団グッズの業務を主に事業をスタートした。その後、特撮番組『サンダーマスク』でテレビ企画に進出、1977年の『無敵超人ザンボット3』でアニメに乗り出した。
1979年に放送開始した『機動戦士ガンダム』で急成長を遂げる。社員は30名あまりと少数ながら通期売上高で百数十億円、利益20億円超と驚異的な利益を叩き出す。その源泉が版権事業の売上げの7割以上を占める「ガンダム」関連のライセンス管理である。
一方経営は那須雄治氏を筆頭とするオーナー会社だが、現在、那須氏は経営から退いている。企業の事業継承と将来をどうするかも、今回那須氏が公開買い付けに賛同する理由とみられる。