中国のテンセント・ピクチャーズが、日本、米国をパートナーとした映画製作を相次いで発表した。日本とは往年の特撮テレビシリーズ『恐竜戦隊コセイドン』のリメイクに取り組む。また米国のタイム・ワーナーグループのターナー・アジア・パシフィックとは長編アニメーョン映画のビジネスを進める。
いずれのプロジェクトも、9月17日に上海で開催されたテンセント・ピクチャーズ2016年新作発表会で明らかにされた。発表会では映画20作品とテレビシリーズ1作品のプロジェクトが紹介された。とりわけ注目を集めたのがこれらの海外との連携だ。
テンセントは、中国のSNSであるQQとメッセンジャーアプリ微信で急成長、現在では中国を代表する巨大インターネット企業である。事業の多角化も進んでおり、映画やゲームもそのひとつ。テンセント・ピクチャーズは、こうしたエンタテインメント分野の事業を手がけている
今回リメイクが発表された『恐竜戦隊コセイドン』は、日本でも馴染みがない人も多いかもしれない。何しろ製作は40年近く前、1978年から79年にかけて1年間にわたり日本で放送された往年の特撮テレビシリーズである。『恐竜探険隊ボーンフリー』、『恐竜大戦争アイゼンボーグ』などに続く、恐竜をテーマにした円谷プロの作品だ。
白亜紀と現在を行き来するタイムトラベルを守るコセンドン隊の活躍が描かれた。シリーズは中国にも輸出され、高い人気を誇ったが、それが今回の企画につながったようだ。
リメイクの取り組みにあたっては、円谷プロと協力。プロデューサーは『呪怨』や『リング』などで知られる一瀬隆重が担当する。
テンセント・ピクチャーが中国でのアニメーション映画製作に初めて乗り出すのも注目される。映画は微信のイメージキャラクターであるツズキ(兔斯基)を題材にする。映画はCGアニメーションと実写をハイブリットしたスタイルで、2017年に制作に入り、2018年の中国公開を目指す。
ターナー・アジア・パシフィックは、現在、アジア地域でCNNやカートゥーン・ネットワーク、アダルト・スイム、HBOほか多数のチャンネルを運営している。タイム・ワーナーグループのアジアの主要拠点である。国際的なネットワークと、アニメーション/キャラクターを得意とすることから今回の合意につながったようだ。
映画の題材となるツズキは、少しユルめの白いウサギのキャラクター、イラストレーターの王卯卯が創り出した。2006年の登場から10年、長年にわたり愛されてきた。
映画の製作と配給はテンセントが手がける。ターナーはライセンス展開と商品開発、ライブエンタテイメントなどキャラクターの二次利用に注力する。テンセントはターナーと組むことで、IPビジネスを拡大する狙いだ。ツヅキはテンセントにとって初のアニメーション映画となることもあり、まずは海外の有力企業の手を借りる。
テンセントの積極的な映像ビジネス展開はこれにとどまらない。レジェンダリーが製作する超大作『キング・コング』の新作に製作出資するのも大きな話題だ。テンセントにとっては『ウォークラフト』に続く、ハリウッド映画への投資になる。また『ダークナイト』『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』で知られる大物監督・脚本家のデヴィッド・S・ゴイヤーと中国向けの新コンテンツ開発で契約を結んだ。
テンセントは今後、中国のマンガ、ゲーム、小説のさらなる映画化も視野に入れている。米国、そして日本も巻きこんでその映画ビジネスは大きく拡大しそうだ。