2月15日から9日間にわたりドイツで開催されたベルリン国際映画祭は、最終日にあたる24日にコンペティション部門をはじめとする各賞を発表した。グランプリにあたる金熊賞に、ルーマニアのアディナ・ピンティリエ監督の『タッチ・ミー・ノット』が選ばれた。
また銀熊賞(監督賞)には、『犬ヶ島』のウェス・アンダーソン監督が選ばれた。『犬ヶ島』は、近未来の日本を舞台にしたストップモーション(コマ撮り)アニメーション。声優として野村訓市、渡辺謙、村上虹郎、夏木マリ、高山明、野田洋次郎らが出演する。日本人にも必見の作品だ。
ウェス・アンダーソン監督は米国出身で、2000年代初めより次世代の才能として大きく注目されてきた。『グランド・ブダペスト・ホテル』や『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』などの代表作があるが、実写映画と同時にアニメーション映画も撮る。2009年のストップモーションアニメーション『ファンタスティック Mr.FOX』は、ロサンゼルス映画批評家協会賞やニューヨーク映画批評家協会賞など数々のアワードに輝いた。
『犬ヶ島』も当初より映画関係者の期待は高く、アニメーション映画としては初めてベルリン国際映画祭のオープニングを飾った。監督賞の受賞は、そうした期待に応えたかたちだ。
ベルリン国際映画祭は、世界の映画業界のなかでカンヌ国際映画祭と並び称される。映画祭ではこれまでもアニメーション映画がオフィシャルコンペティション部門で受賞したことがある。2002年に宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』がグランプリにあたる金熊賞を獲得し、大きな話題を呼んだ。2012年には和田淳監督の『グレートラビット』が短編部門の銀熊賞を受賞した。いずれも日本関係となっているのは、日本人にとっては興味深いところだろう。
近年、世界各国で、長編アニメーションの制作が増えている。これまで大人向けのアニメーションは日本の独壇場ともされてきたが、流れは大きく変り始めている。監督は今回のウェス・アンダーソンのようにアニメーションを専門としないことも多い。アニメーションは映像表現の方法のひとつとして作り手に選ばれ、また観客・批評家から評価される。今回の『犬ヶ島』の受賞は、そんな新しい時代をも反映していそうだ。