東宝通期決算 売上高は過去最高も、26年2月期は慎重な見通し

ファイナンス決算

 2025年4月14日、東宝は2025年2月期通期決算を発表した。映画配給やアニメ事業の好調に牽引され、連結売上高は過去最高の3131億7100万円(10.5%増)となったほか、営業利益は646億8400万円(9.2%増)、経常利益は644億5500万円(2.3%増)である。ただし当期純利益は433億⑧300万円で4.3%減少だった。
 映画事業、演劇事業とも好調だった。映画事業の売上高は2092億5300万円(8.5%増)は全体の2/3を占めており、営業利益も508億700万円(13.6%増)と過去最高の記録である。演劇事業は売上高228億9000万円(13.6%増)、営業利益41億2900万円(32.6%増)と増収増益。施設の再開発を前にした帝国劇場のクロージングラインナップは全席完売だった。
 不動産事業は売上高796億5300万円(15.2%増)、営業利益は168億2600万円(4.4%減)と安定している。

 映画事業では劇場を運営する映画興行事業が売上高756億3300万円(3.6%減)、営業利益が97億7200万円(11.8%減)と減収減益だった。映画館入場者数が減少しており、これは2025年の国内劇場興行のトレンドを反映している。
 そのなかで映画営業事業が売上高で559億5800万円(20.3%増)、営業利益は220億8800万円(23.3%増)と大きく伸びているのは、東宝が出資・配給する作品、特に自社幹事作品のヒットの影響が大きい。期間中の主要タイトルは『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』、『キングダム 大将軍の帰還』、『ラストマイル』、『変な家』、『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』、『グランメゾン・パリ』など。
 映像事業は引き続きアニメが牽引した売上高776億6100万円(14.5%増)、営業利益189億4600万円、このうちアニメコンテンツの利用は338億8100万円(16.1%増)と高い伸びになっている。

 2026年2月期も邦画アニメは、注目作が多い。『ドラえもん』『名探偵コナン』『クレヨンしんちゃん』の例年新作のでる定番に加えて、『鬼滅の刃』と『チェンソーマン』と原作・テレビシリーズの人気が高い作品のの劇場版が重なったことは26年2月期の業績にポジティブな要素となる。さらに細田守の新作『果てしなきスカーレット』 で大規模な配給が実現しそうだ。
 有力作品が多くラインナップされている。実写邦画では大ヒット作の続編『TOKYO MER』や『沈黙の艦隊』、洋画では東宝東和配給の『ミッションインポスィブル』、『ジュラシックワールド』大型シリーズがある。新海誠監督の初期の傑作を実写化する『秒速5センチメートル』は、アニメ映画の二次展開のひとつとして注目される。洋画でも大ヒットのアニメーションシリーズの初の実写版『ヒックとドラゴン』の期待作と言っていいだろう。

 大型映画が並ぶものの東宝の2026年2月期の業績予想は控えめだ。連結売上高は前期より4.2%の3000憶円、営業利益570億円、経常利益550憶円、当期純利益375億円は前期より二桁少ない数字となる。
 これについて東宝は大型ヒットであった『ゴジラ‐1.0』の配信権収入がなくなる反動や演劇事業で主力の帝国劇場の一時休館が始まったことを理由にあげる。

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