スタジオジブリ「熱風」、“アニメーション製作事情”を特集 制作本数増加からファンの変化まで
- 2016/12/21
- 本の紹介
『君の名は。』が記録的な大ヒットをし、テレビアニメの人気作品は関連グッズやイベントで拡大を続ける。アニメ制作本数も急増と国内アニメ産業は、現在、かつてないほどの活況を呈している。一方で、制作現場の人手不足は深刻化している。その環境は依然厳しい。
こうしたアニメ製作の現状を分析する特集が、2016年12月10日にスタジオジブリが刊行する小冊子「熱風」で掲載されている。「日本のアニメーション製作事情」と題して、変化するアニメ業界で何が起きているのか、テレビアニメ、劇場アニメ、ファンの変容と3つの視点から取り上げる。
特集は3つのパートから構成され、およそ50ページにも及ぶボリュームだ。冒頭はクラフターのプロデューサー石井朋彦氏による「テレビアニメは今どうなっている?」。自身の経験も交えながら、アニメーション制作が増えている理由、それを支えるアニメスタジオの現状を解き明かす。現場もビジネスも知るだけに、スケジュール管理の問題や背景美術での現況など、驚かされる話も多い。さらに課題を整理して、今後の在りかたにも触れる。
ふたつめは、博報堂の森永真弓氏による「その視聴は趣味か使命か会話のネタか ~過剰なまでに物語の山を積まれ続ける視聴者~」である。こちらは企業の調査部門らしい、豊富なリサーチをベースに現在のアニメファンの気質を探る。
Twitterでのリツイート数と映画の興行収入の相関関係、テレビアニメの再生率の変動、録画率などの動きを分析する。単なる数字の解析にとどまらず、若い世代のアニメの意識変化につなげるのが鮮やかだ。
そして最後は、東宝のアニメ事業のキーパーソンである二人へのインタビューである。「TOHO animationのいま、そしてこれから」とのタイトルで、映画『君の名は。』の製作や宣伝の経緯はもちろん、深夜テレビシリーズの進出など、東宝のプロデューサーが直接語る。
『君の名は。』の空前の大ヒットの理由や、躍進を続けるTOHO animationの秘密も分かるかもしれない。
特集を企画する「熱風」は、スタジオジブリが毎月発行する無料の小冊子である。無料というものの150ページにもなるボリュームに連載記事と特集と読み応えたっぷりになっている。
内容も企業広報誌とは一線を画し、スタジオジブリだけでないアニメーション全体や、カルチャー、時には社会的な動きを取り上げる。これまでの特集記事には「電子書籍」から「人工知能」「広告と宣伝」「憲法改正」「人口減少社会」など今日的な話題も多い。単なるアイキャッチにとどまらず、スタジオジブリならではの切り口が特徴だ。
冊子は全国のジブリ関連書籍常設店で無料配布しているほか、通信事務経費実費(2000円消費税・送料込)の支払いで年間定期購読も出来る。配布店や購読の詳細は、スタジオジブリ 出版部のサイトで確認出来る。
スタジオジブリ 出版部のサイト http://www.ghibli.jp/shuppan/