マンガ人気が国内外で高まる一方で、依然、マンガビジネスで深刻な状況となっているのがインターネット上の海賊版サイトである。そのなかで中国で運営し、日本向けにマンガを無断配信をしていた男性がこのほど逮捕され、行政処罰を受けたことが分かった。コンテンツ海外流通促進機構(CODA)とKADOKAWA、講談社、小学館、集英社などの大手出版社が2022年7月14日に発表した。
発表によれば処罰を受けたのは、中国重慶市に住む男性だ。男性は重慶市文化市場執法総隊より情報ネットワーク伝達権保護条例違反に問われた。6月15日に犯罪による収益約33万円を没収され、加えて約60万円の罰金の支払い命令を受けた。また運営サイトも閉鎖させられた。
罰金などの金額は小さいが、中国での摘発は画期的な実績である。男性は2019年より「漫画 BANK」と呼ばれるサイトを運営し、2019年12月から2021年11月の2年間でアクセス数は10億近くに達した。これはマンガ出版社に多大な影響を与えたとされる大手海賊版サイト「漫画村」に匹敵する規模となる。
「漫画村」は2018年に閉鎖され、その後、運営者が著作権法違反などで有罪判決を受けたことはニュースで大きく取りあげられている。しかしその後も同種の海賊版サイトは後が絶たず、その代表的な存在が「漫画 BANK」であった。
「漫画 BANK」自体は、2021年11月に閉鎖されている。KADOKAWA、講談社、小学館、集英社が米国裁判所においてサイトが利用するITサービスに対して行った情報開示請求から運営者情報を突きとめたことがきっかけとなった。しかし男性はその後も後継サイトを複数立ちあげて、無断配信を続けた。
サイトは中国から運営する一方で、中国国内から閲覧出来ないようにしていた。このため中国国内では被害が発生せず、同国での摘発が困難とみられていた。
しかし今回は出版4社から要請を受けたCODAが、中国当局に情報を提供することで行政処分につながった。インターネット上の海賊行為は国境を越えて行われることから、摘発に様々な困難が生じる。このため国外で日本人向けの海賊版サイトを運営者に対して、現地で処罰が下されるのは今回が初のケースになる。こうした実績づくりは、今後の活動にもよい影響を与えそうだ。