国内最大手の映画会社である東宝の2021年2月期の決算が、4月13日に発表された。新型コロナ感染症拡大におけるエンタイメントの自粛が相次いだことから業績は大幅な減収となった。連結売上高は1919億4800万円(27%減)である。
しかし営業利益は224億4700万円(57.5%減)、経常利益は241億9500万円(56.1%減)、当期純利益146億8800万円(59.9%減)と、高水準を保っている。演劇や映画興行が赤字転換と打撃が大きかったが、不動産事業や映像事業が経営体力を発揮した。
映像事業のなかでも、アニメ製作事業は好調であった。ポスト『鬼滅の刃』としてその人気の高まりが注目される『呪術廻戦』に製作出資するほか、同じく製作出資する『僕のヒーローアカデミア』も好調だ。期間中は製作出資作品からの配分金収入があった。
アニメ製作単独の期中売上高は、128億7000万円、前年比26%増となる。アニメ製作事業の売上は2018年2月期の102億8200万円を大きく超えて過去最高を記録した。東宝がアニメ製作事業を独立して公表し始めた6年前の23億7500万円から実に5倍以上になる。このなかにはアニメ映画の配給収入や興行収入は含まれていない。それも考慮すれば、近年の東宝のアニメ製作事業の好調ぶりが際立つ。
アニメ製作のほか、映像パッケージ、出版・商品、ODS、実写製作を含めた映像事業全体の売上高は301億1400万円(8.5%減)、営業利益は49億7300万円(25.1%減)となった。『天気の子』『舞台『刀剣乱舞』維伝 朧の志士たち』といったヒットがあったパッケージは好調だったが、上映タイトルが少なかったODSは売上げの落ち込みが大きかった。
また映画営業事業、映画興行事業、映像事業の3つを合わせた映画事業全体は、売上高1161億9700万円(32.8%減)、営業利益は103億5100万円(69.5%減)である。「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」が記録的な大ヒットが、映画配給、興行の双方で業績を牽引したが、全体では減収減益であった。
一方で演劇事業は公演の中止や延期、規模の縮小が相次ぎ減収赤字。売上高79億4800万円(54.7%減)、10億6600万円の営業赤字となった。
不動産事業は小幅減収減益売上高651億2400万円(3.8%減)、営業利益170億6200万円(8.6%減)である。営業時間短縮や臨時休館に伴う賃料免除や、入居テナントへの賃料減額が減収につながっている。
22年2月期は、引き続き新型コロナの影響が続いている。しかしすでに大ヒットスタートになっている『シン・エヴァンゲリオン劇場版』や前期にはシリーズ公開のなかった『劇場版 名探偵コナン』の新作、さらに新型コロナ以降の北米で最大ヒットになっている『ゴジラVSコング』がある。さらに『竜とそばかすの姫』、『劇場版 呪術廻戦 0』、『シン・ウルトラマン』など話題作が目白押しだ。状況は引き続き不安定であるが力強いラインナップに期待がかかりそうだ。