映画大手・東宝の業績が、混迷続くコロナ禍のなかでも好調だ。2022年1月22日に発表された22年2月期第3四半期(21年3月~11月)の決算で、大幅な増収増益を実現している。第3四半期までの連結売上高は1686億2000万円と前年比22.3%増、経常利益は281億7600万円(64%増)、経常利益は299億4600万円(64.5%増)、当期純利益は201億6400万円(79.6%増)だ。
前々年19年2月期には及ばないが、回復基調が鮮明で200億円から300億円の利益確保は経営体力を感じさせる。通期業績予想は変更がなく、連結売上高2260億円、営業利益380億円、経常利益400億円、当期純利益は260億円としている。しかし第4四半期には東宝配給の『劇場版 呪術廻戦 0』がすでに大ヒットとなっていることから、この見通しを上回ってくる可能性もありそうだ。
『呪術廻戦 0』だけでなく、今期の業績回復はアニメが大きな役割を果たしている。東宝は堅調な業績について、「東宝配給作品の大ヒット」や「アニメーションレーベル「TOHO animation」作品の好調」のふたつを挙げている。
今期の主要な配給作品には、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』『名探偵コナン 緋色の弾丸』『竜とそばかすの姫』『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション』とアニメ映画が目白押しだ。
さらにアニメ製作事業売上げは第3四半期までで200億円突破の205億9200万円と前年同期の約2.4倍。TVアニメ版の『呪術廻戦』『僕のヒーローアカデミア』『ゴジラ S.P〈シンギュラポイント〉』などの主要タイトルがあり、それらの商品化権収入や配信ほかの配分金収入があった。またアニメ事業とは別に『ウマ娘 プリティーダービー Season 2』のBlu-ray、DVDが好調だったパッケージ事業の売上高が102億9700万円(64.9%増)ある。
映画事業全体では売上高1068億6500万円(29.9%増)、営業利益163億2800万円(109%増)だった。製作・配給の映画営業が売上高296億3600万円、営業利益69億8600万円。劇場運営の映画興行は売上げ409億5800万円(27.6%増)と大きく伸び、4億8800万円と小幅ながら黒字に転換した。アニメ事業・パッケージ事業・出版・商品事業・実写製作事業・ODS事業からなる映像事業は売上高362億2700万円(67.4%増)、営業利益88億5300万円(196.8%増)だ。
演劇事業も回復しつつある。コロナ禍対応が進んだことが大きく。売上高119億400万円(148.3%増)。収益は黒字転換し、24億5500万円の営業利益を確保した。
帝国劇場の『Endless SHOCK -Eternal-』『モーツァルト!』『レ・ミゼラブル』『王家の紋章』ほか、東京建物 Brillia HALLの『マドモアゼル・モーツァルト』が主要タイトルだ。
不動産事業は安定し、賃貸用不動産の空室率は0.3%台と低水準となっている。営業収入は478億8500万円(1.9%減)、営業利益は122億8300万円(8.3%減)だった。