2020年12月28日、「エヴァンゲリオン」シリーズを製作する株式会社カラーは公式サイトにて、『エヴァンゲリオン』シリーズのファン創作物の公開に関するガイドライン」を公表した。非商用目的で個人が「エヴァンゲリオン」シリーズを使用した創作をする際に適用する。カラーは「エヴァンゲリオン」シリーズの制作者であると同時に、全ての原作権も保有している。
公表されたルールでは、非商用目的の個人創作において作品やキャラクターを一定の制限のなかで無償にて利用することを認めている。具体的な創作の例には、イラストやマンガ、写真などの静止画のほか、動画、さらに小説などを挙げている。
マンガやアニメ・ゲームといった作品やキャラクターを利用したファン創作は、現在、曖昧な位置づけにされていることが多い。たとえ商業行為がなくとも、厳密に法律を適用すれば権利者に無許諾で作品やキャラクターを利用した創作物を公共の場で公開することは著作権侵害の可能性が高い。しかし著作権者の多くは、そうしたファン活動を否定することも、承認することもなく曖昧にしてきた。
今回カラーはガイドラインをファンが安心してファンアートなどを制作するためのルールと位置づけている。ファンの創作を咎めることなく、熱心なファン活動を積極的に受けとめる。
ただし注意したいのは、ガイドラインは用範囲を個人のファン活動で無償公開による非商用目的と限っていることだ。無償であっても法人は該当しない。また個人でも、広告や宣伝・販促を目的とする場合は商用利用になるとする。
また認められない創作も挙げている。「作品や他者を傷つける目的のもの」、「特定の政治・宗教・信条の過度な奨励・貶めるもの」、「過度に暴力的・グロテスクなもの」、「ポルノ表現を目的とするもの」、「反社会的な表現」だ。さらに「他者の権利を侵害しているもの」、「公式作品と誤認される可能性のあるもの」と多岐にわたる。
表現の考え方び線引きは難しいが、カラーでは「作品への理解と尊重をもって創作してください」、「既存のファンコミュニティの活動にも敬意と理解を持って創作してください」とする。これに照らし合わせれば、明確になるだろう。
創作物を公開する場は、「全年齢向けのSNS」、「イラスト投稿サービス」、「小説投稿サービス」、「動画投稿・配信サービス」などを挙げた。
こうしたサービスには、運営側による収益化プログラムが当初から実装されていることも少なくない。これについては、カラーではそれはあっても構ないとする。
一方でファンに気になるのは、同人誌などの販売だ。金銭のやりとりが発生するため、個人であっても商用利用の範囲に含まれる可能性が高い。これについては、「現在、ファンアートの販売・製品化に関するルールについても検討しています。 続報をお待ち下さい」と告知している。今後、こちらは何か別のかたちでルールが示されそうだ。
今回は創作とは別に公式作品の一部(音声、動画、静止画、文章など)を素材に利用した投稿についも言及している。こちらは「引用」の範囲であれば大丈夫としている。動画や音楽・音声は基本的に利用できない。これらは作品そのものとはまた別の権利と兼ね合いもあるためとみられる。
いずれのルールについても詳細は、カラーの公式サイトにて確認出来る。