Kickstarterが講談社と提携 クリエイター育成で需要拡大を目指す

提携

 世界最大規模のクラウドファンディングサイトKickstarterと日本の大手出版社の講談社が、パートナーシップを結んだ。Kickstarterのシステムを活用したクリエイターの創作活動支援に両社で取り組む。
 講談社はサイトを通じてクリエイター発掘し、クラウドファンディングのプロジェクトを立ち上げる。またプロジェクトの運用も支援、さらにクリエイターの世界発信を目指す。
 具体的なパートナー施策として、2019年5月から第一弾となるクリエイターに特化した専門ラウンジ「キックスターターセッションズ」を東京・新橋にオープンする。そこでクリエイター向けの体験型ワークショップやセミナーなどを開催する予定だ。

 Kickstarterは2009年にクラウドファンディングのためのプラットフォームとして米国でスタートした。プロジェクト立案者がサイトでそれを提案、賛同した人たちから資金を募る。立案者はそれでプロジェクトを推進し、資金提供者にはリワードと呼ばれるお礼を渡す。従来のスキームでは実現しにくかったプロジェクトを、ファンパワーを集結することで実現する。
 インターネット時代の新しいプロジェクトファイナンスとして注目されたが、スタート10年ですでに根づいている。同様のサービスは他にもあるが規模とプロジェクトの多さで、Kickstarterが引き離す。
 プロジェクトのジャンルは、映像やアート、音楽、ゲームやテクノロジーなど全部で15に分かれており、出版、コミックも含まれる。特に映像やゲーム、出版はKickstarterと相性がよいとされてきた。
 アニメーションでは湯浅政明監督のショートアニメ『キックハート』、アニメスタジオ トリガー制作の『リトルウィッチアカデミア』、キネマシトラス制作のSFアニメ『Under The Dog』などの成功例がある。サテライトが制作に参加するNetflixオリジナルアニメ『Cannon Busters』も、パイロットフルム制作費をKickstarterで集めた。

 しかし米国では大きな成功を収めたKickstarterだが、現在は日本進出が芳しくない。クラウドファンディング普及初期の頃こそ、映像化実現につながる大型プロジェクトが多額の資金を集めて注目されたが、現在は日本の映画、アニメ、出版はCAMPFIREやMotionGalleryなどでクラウドファンディングをする傾向が強まっている。
 Kickstarterは当初英語の手続きや米国法人が必要となった。このため日本で国内向けの同様のサービスが始まると煩雑さを避け日本からのKickstarterの利用は目立たなくなった。2017年に日本語版サービスを導入したが、日本語化が不充分だったこともあり、先行する他の日本サービスに追いつけていない。
 今回の講談社との提携はKickstarterにとって起死回生の策と言えそうだ。大きなブランドによる宣伝効果や、コミック・出版に強い講談社のサポートするプリジェクトが期待できる。

 一方で紙出版中心の事業構造から抜け出したい講談社は、新規事業の糸口を見つけたいだろう。特に出版事業で培ってきたクリエイターサポートのノウハウをここで活かせるとの目論見が見える。
 ただし現在は、クリエイターの集まるサロン以外は未発表。講談社がクラウドファンディングを通じてどのようなサポートが可能なのかはほとんど見えていない。日本や出版を超えて、世界中のクリエイターが自由に表現することをサポートするとしているが、具体的な活動は今後の新たな発表を待つことになる。

Kickstarter 日本語サイト
https://www.kickstarter.com/japan

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