アニメ製作のIGポートは、2019年4月12日に19年5月期第3四半期決算を発表した。昨今の映像制作環境の変化に影響を受けて、厳しい結果となった。
連結売上高は66億9600万円と前年同期比で4.4%増となったが、営業損失5億1700万円、経常損失5億1800万円、当期純損失5億700万円と利益面ではいずれも赤字となった。映像制作事業の損失が拡大したほか、前年同期に好調だった出版事業、版権事業がいずれも減収減益だった。
アニメーション・実写映画制作などの映像制作事業は、売上高46億1900万円(30.1%増)と売上げを大きく伸ばした。しかし営業損失は3億9900万円から5億3100万円に増加した。
損失の増加は、引続き映像制作のコストが収入と逆転しているとみられるためだ。IGポートはCG制作費と外注費が高騰しているためと説明する。さらにクリエイターの人員不足により制作期間が長期化し、損失が嵩んでいる。IGポートは新規受注については現状にあった制作受注額で交渉をしているが、既存の契約でこうした状況が続いているようだ。
期間中の主力制作作品は、劇場映画が『バースデー・ワンダーランド』、配信用で『ULTRAMAN』、テレビシリーズで『フューチャーカード 神バディファイト』、『風が強く吹いている』など。幅広いメディアに向けた作品を制作している。
出版事業は売上高7億7800万円(39.8%減)、営業利益が5400万円(84.5%減)。「リィンカーネーションの花弁」シリーズのヒットはあったが、『魔法使いの嫁』、『曇天に笑う』のあった前年には及ばなかった。
版権事業も減収減益。売上高が10億5300万円(20.1%減)、営業利益は3600万円(94.7%減)である。前年に大きかった『魔法使いの嫁』の海外販売に相当するものがなかった。また映像マスターとコンテンツ資産等の減価償却費が2億6500万円増加したのが大きかった。自社の製作出資コストが先行してるかたちだ。期間中の主要版権タイトルは、『魔法使いの嫁』、『進撃の巨人』、『銀河英雄伝説 Die Neue These』、『B: The Beginning』など。
第3四半期までの決算を受けて、IGポートは通期決算の業績予想を修正した。新しい見通しでは、連結売上高は97億5100万円から90億6200万円、営業損失は1億5700万円から4億3400万円、経常損失は1億3800万円から4億3500万円、当期純損失は2億円から2億900万円にそれぞれ引き下げられる。
売上高の減少は、映像制作の納期の一部が来期に繰り下げられたこと、コミックスの売上が当初の見込みを下回るため。利益面での引き下げは、映像制作部門のコスト増大が大きい。
一方でアニメーション制作子会社ジーベックの事業譲渡により3億円の特別利益が見込まれる。これを計上することで当期純損失は2億900万円にとどまる。