アニメーション作家がインディ・ゲームに進出 変わる映像表現、新千歳空港映画祭で紹介

アニメーションとインディ・ゲーム

 11月2日から5日まで開催された新千歳空港国際アニメーション映画祭は、2017年で4回の新しいアニメーション映画祭だ。短い歴史にもかかわらず、いま世界のアニメーションシーンのなかで一際、関心を集めている。それは従来考えられてきたアニメーションだけでなく、周辺カルチャーに拡張する独特の取り組みに理由がある。
 その挑戦のひとつが、インディ・ゲームだ。今回、会場内に「アニメーションとインディ・ゲーム」と題した企画展示が設けられた。「アニメーション作家によるインディ・ゲーム」、「アニメーション・ファンにオススメのインディ・ゲーム」とふたつのコーナーで実機と伴に作品を紹介をする。決して広いスペースではないが、立地のよさもあり、期間中に多くの来場者を集めた。

 インディ・ゲームは、近年、大手ゲーム会社のゲームソフト開発が大作化、膨大な予算を必要とすることが加速するなかで、アンチテーゼのように生まれた現象だ。インターネットの普及と開発技術の一般化、さらにゲーム配信プラットフォームの普及が、逆に低予算のゲームソフトを可能にしている。挑戦的なクリエイターを輩出するなど、ゲームカルチャーの大きな潮流となっている。
 インディ・ゲームの挑戦は、ビジネスだけでなく、クリエイティブや映像表現にもわたる。これまでのゲームはインタラクティブであるがために、真っ直ぐなストーリーを紡ぎにくいといった弱点があった。あるいはビッグバジェットであることで、アニメやマンガなどに較べると文学性を背負う作品が少なかった。
 しかしインディといった手段を得ることで、そこに文学性が流入し、より作家性の高い作品も多く生まれている。さらにアニメーション作家が新たな表現手段として関心を持つようになり、独自の表現を繰り広げている。

 それを代表する作家が、今回の企画で作品紹介されているデヴィット・オライリーやミヒャエル・フライ&マリオ・フォン・リッケンバッハといった面々だ。彼らはゲームの世界に新たな表現を持ち込むと同時に、これまでアニメーションでは難しかったコミュニケーションやインタラクティブ性に映像作品とは異なる新しい可能性をゲームに見出している。
 作家性を打ち出したアニメーションは、これまで一方的にメッセージを送り出すことが多かった。それはアニメーション作家の作品の敷居の高さの理由のひとつでもある。しかし、ゲームではメッセージを送り出すのでなく、プレイヤーがゲームをするなかでメッセージを見つけだす。それは映像表現のアプローチ手段も広げる。
 実際に新千歳の会場には、インディ・ゲームを楽しむ家族連れや小さな子どもたちも多くみられた。勿論、人が多く行き交う空港内のショッピングセンターという立地はある。それでもゲームの持つ大衆的なイメージと手軽さは、映像表現の新たなアプローチの可能性を感じさせるのに充分だった。

新千歳空港国際アニメーション映画祭
http://airport-anifes.jp/

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