ディズニー、独自の映像配信プラットフォームを目指す Netflixとの契約は終了

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 世界最大の映画・映像会社であるウォルト・ディズニーが、映像配信の有力企業BAMTech, LLCの株式を買い増して、同社の経営権を握ることになった。
 2017年8月8日、ディズニーはBAMTechの株式の42%を15億8000万ドル(約1900億円)で取得したと発表した。2016年8月に、すでに同社の株式の33%を取得しており、合わせて全体の75%を握ることになる。ディズニーはBAMTechの経営により主体的に関わる。

 BAMTechの会社名は、もともとMLB Advanced Mediaに由来する。米国のプロ野球リーグのメディア部門が試合の配信事業を分離することで2015年に立ち上げた。
 ただし今回のディズニーの買収の目的は、単なる野球中継の配信事業の獲得ではない。8日には同社の2017年第3四半期決算も発表され、その冒頭で新たなコンテンツ配給・流通戦略を目指すとしてBAMTechの買収を挙げた。

 BAMTechの技術を活かし、2018年にスポーツチャンネルESPNの自社配信事業をまず開始する。さらに2019年にはディズニーブランドの新しいサービスをスタートする。
 ディズニーはこれまでにも、大手プラットフォームのHuluにはNBCユニバーサル、FOX、ターナーと共に30%出資していた。また定額課金視聴サービスのNetflixに最新作を提供している。
 しかし、2018年でNetflixとの契約を打ち切る。『トイストリー4』、『アナと雪の女王2』、実写『ライオンキング』を含む2019年以降の新作映画は、新しく出来るディズニーのプラットフォームで独占配信される。さらに配信向けのオリジナル番組も積極的に手掛けるとする。既存の作品も多数これに加わる。

 ディズニーの大胆な配信ビジネスに対する戦略転換の理由は、今回の決算発表からも垣間見える。配信プラットフォームと競合するケーブルネットワーク事業の第3四半期までの売上高は125億760万ドルの1%減、営業利益は41億1700万ドル(13%減)であった。
 とりわけESPNの番組コストの増加と広告収入の減少が響いた。今回、ESPNの配信サービスが先行するのは、BAMTechがスポーツ中継を得意とする以外に、こうした理由もありそうだ。
 また映像配信ビジネスが拡大するなかで、他社配信プラットフォームに番組を提供するだけでは利益は限られる。配信の視聴料や広告などは、プラットフォームのものになる。テレビ放送の放送局と同様にプラットフォームを握ることで利益の拡大を目指す。

 米国の映像配信ビジネスでは、現在NetflixとAmazon プライムビデオの2社が圧倒的なシェアを握り、市場は安定したかにみえる。しかし、従来の映像ビジネスで大きな力を持ったハリウッドはここでは主導権を取れない。すでにソニー・ピクチャーズ エンタテインメントがCrackleを運営するなど、独自の動きも出ている。
 映画・テレビ業界最大手のディズニーが、独自プラットフォームに動いたことで、映像配信の世界の動向が見逃せなくなってきた。

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