6月12日から17日まで、フランスでアヌシー国際アニメーション映画祭が開催されている。映画祭の目玉は長編・短編などからなるコンペティション、見本市のMIFAなどだ。
さらに見逃せないのが、世界各国のスタジオによるプレゼンテーションである。最新作の紹介や上映、アヌシーが初出しとなる映像も少なくない。2017年はイルミネーション・エンターテインメントによる『怪盗グルーのミニオン大脱走』ワールドプレミアをはじめ、ドリームワークス・アニメーション、ワーナー・アニメーション・グループなどの有力スタジオが集まった。
なかでも大きな注目を集めたのは、ディズニー/ピクサーのプレゼンテーションだ。16日朝10時から3時間半にも及ぶ長大なもので、2017年11月米国公開のピクサー最新作『リメンバー・ミー』(原題『COCO』)のプレゼンテーション、公開を目前に控える『カーズ 3』と短編『Lou』の上映と監督挨拶が行われた。
一番の目玉は、『リメンバー・ミー』(原題『COCO』)のプレゼンテーションだろう。これまであまり情報が公開されていなかったが、今回は初公開のダイジェスト映像をたっぷり使って、40分以上にわたりストーリーの前半部分を共同監督のエイドリアン・モリーナ監督、ダーラ・K・アンダーソン プロデューサーが紹介した。
映画の舞台はメキシコ、さらに主人公のミゲルが迷い込む死者の国。さらに語の鍵を握るのは音楽だ。長年、音楽を禁止された一族に生まれたミゲルの夢はミュージシャンになることだった。そんな一族とのトラブルをきっかけに、ミゲルは骸骨ばかりの世界に迷い込んでしまう。ミゲルは、無事にもとの国に戻れるのか?冒険と歌が繰り広げる。
メキシコも死者の国も、ラテンアメリカ特有の華やかな色彩で溢れる明るく楽しい映像で表現されている。音楽もノリのよいラテンミュージックで満載だ。ミュージシャンを目指すミゲルは明るく陽気な少年である。
ピクサーのシリーズ物以外の長編映画は、2012年の『メリダとおそろしの森』、2015年の『インサイド・ヘッド』、2016年の『アーロと少年』とやや重いテーマが続いている。そうしたなかで『リメンバー・ミー』は、もう少し気軽に観られる楽しい作品になりそうだ。
それは「トイ・ストーリー」シリーズや『モンスターズ・インク』、『ファインディング・ニモ』を手がけてきたリー・アンクリッチ監督と、モリーナ監督の個性なのだろう。今回のプレゼンテーションの力強い語り口にも自信を感じさせる。日本公開は2017年12月23日、スクリーンに登場するのはまだ半年先だが、期待するのに十分な作品である。
一方、短編『Lou』も楽しい作品だ。タイトルは、「Lost & fOUnd」に由来する。学校の校庭を舞台に、他のこどもからものを奪うイジメっ子と不思議な生き物との交流を描く。ボールやセーター、携帯ゲーム機などが様々なかたちで組み合わせられ、動き出す映像の魅力と、イジメっ子の心の動きが見どころだ。
作品はデイヴ・マリンズ監督の子どもの頃の想い出をイマジネーションのきっかけにしたのこと。共同監督のダナ・マレーは、イジメっ子のキャラクター造形に苦労したことなどを披露した。