映画祭のなかの日本の存在感:アヌシー国際アニメーション映画祭の戦略(後編)

TOKYOFOUCUSの企画ピッチ

Ⅲ. アヌシーの中の日本

■ 短編グランプリも2度受賞 コンペティションでは日本は一定の存在感

日本とアヌシーのつながりは、意外に強い。映画祭の初期から日本からのエントリーがあり、1963年には早くも久里洋二監督の『人間動物園』が短編部門審査員特別賞を受賞している。さらにアヌシーの中での日本を印象づけたのは、2003年に短編部門で山村浩二監督の『頭山』がグランプリを受賞したことだ。さらに2008年には加藤久仁生監督の『つみきのいえ』が同賞に輝く快挙が続いた。
長編アニメーションは日本の得意とする分野である。1993年に宮崎駿監督が『紅の豚』で、1995年には高畑勲監督が『平成狸合戦ぽんぽこ』でそれぞれグランプリを獲得した。2007年の『時をかける少女』長編部門特別賞は細田守監督の名前を世界に知らしめる役割も果たした。その後も、原恵一監督『カラフル』『百日紅 〜Miss HOKUSAI〜』、西久保瑞穂監督『ジョバンニの島』の受賞が続いている。
2010年の川村真司監督『日々の音色』の広告部門ミュージックビデオでのグランプリ、2014年の新井風愉監督『Tissue Animal』広告部門グランプリと、日本らしい感性も評価されている。2016年は短編部門2作品、学生部門3作品、テレビ番組部門1作品、広告部門2作品と全部で8つがコンペインしている。日本のアニメーションが世界レベルで戦えることを示している。

■ 課題は企画部門、求められる日本からの作品

2016年には、作品以外のところで日本の存在感を印象づけた人物がいる。短編部門の審査員3人のひとりとなった日本のCGスタジオのポリゴン・ピクチュアズ代表取締役の塩田周三だ。日本では、『シドニアの騎士』や『トランスフォーマー』のテレビシリーズなどの制作で知られるポリゴン・ピクチュアズだが、むしろ映画祭での評価は同社が2011年に世界的なアニメーション作家である山村浩二監督の『マイブリッジの糸』でカナダのNBFやNHKと共同で製作に参加したことだろう。塩田はそのエグゼクティブプロデューサーを務めた。
アニメーション文化への貢献が評価されるのは、やはり国際映画祭である。しかし、塩田のようなケースは稀有だ。数多くある映画祭のイベントやトークの壇上に日本人を見ることは少ない。人材としての存在感は映画祭では薄い。

これはビジネス面でも同様だ。2016年にMIFAの中心となる見本市会場に日本から出展したのは4ブースのみだ。またこれまで企画ピッチに日本の企画があがるのは稀だった。そのなかで今年は東京都が「TOKYO FOUCUS」としてMIFAに参加し、日本からの企画ピッチとして注目を集めた。そのブースにも多くの人が訪れ、日本からの企画に対する海外からのニーズが高いことを感じさせた。そうしたニーズに十分応えていないのが現状は残念であると同時に、大きな可能も感じさせる。

アヌシーにおける日本の存在感は、映画祭での作品上映が中心。ビジネス面や人の交流はまだ十分に力が及んでいない。これは日本だけでなく、中国、韓国などの他のアジアの国々にもいえる。映画祭の場では、アニメーションの世界はまだまだ欧米を中心に回っている。
しかし、アヌシーがこれに満足しているとは思えない。その映画祭の特集企画からは、次にどこを目指そうとしているかが窺われる。その地域のターゲットはアジアである可能性が高い。ただし、それは日本とは限らない。2016年にはフランスと韓国の友好特集企画が、映画祭で取り上げられた。さらに2017年は中国の大特集が組まれることがすでに発表されている。
アジアとヨーロッパと最も早く、強くつながるのはどの国はどこなのか? ライバルは多いが、短編、長編、テレビ番組、広告、MV、あらゆるジャンルで活躍する日本は、その最短距離にいるはずだ。

アヌシー国際アニメーション映画祭
Festival International du Film d’Animation d’Annecy
http://www.annecy.org/home/

■ 参考

[アヌシー国際アニメーション映画祭における日本の主な受賞作]

1963年 
短編部門審査員特別賞 『人間動物園』 (久里洋二)
1993年
長編部門グランプリ 『紅の豚』 (宮崎駿)
1995年
長編部門グランプリ 『平成狸合戦ぽんぽこ』 (高畑勲) 
2003年
短編部門アヌシー・クリスタル(グランプリ) 『頭山』 (山村浩二)
2007年
長編部門特別賞 『時をかける少女』 (細田守)
2008年
短編部門アヌシー・クリスタル賞(グランプリ) 『つみきのいえ』 (加藤久仁生)
2010年
広告部門ミュージックビデオ最優秀賞 『日々の音色』 (川村真司)
2011年
長編部門特別賞/長編部門観客賞 『カラフル』 (原恵一)
2014年
長編部門審査員特別賞 『ジョバンニの島』 (西久保瑞穂)
広告部門クリスタル(グランプリ) 『Tissue Animal』 (新井風愉)
2015年
長編部門審査員賞 『百日紅 〜Miss HOKUSAI〜』 (原恵一)

2016年アヌシー国際アニメーション映画祭 日本からのコンペティション出品作品

[短編部門]
『サティの「パラード」』 山村浩二
『水準原点』 折笠良
[学生部門]
『FEED』 岡崎恵理
『何も見なくていい/Nothing you need to see』 伊藤圭吾
『夏の女神の口の中』 リュウ・シンシン
[テレビ部門]
『スーパーショートコミックス』 松本慶祐
[広告部門]
Ez3Kiel『L’Oeil du Cyclone』 平岡政展
ササノマリイ『共感覚おばけ』 牧野惇

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